第6話「害獣」

「見たまえ、村上くん」


 放課後、帰り支度をしてると西森さんが鞄を見せてくる。よく見るとミケ猫ストラップの横に新しく小さなクマのぬいぐるみマスコットが付いてる。


「可愛いかろう!」


「そうだね、猫に続いてクマも可愛いって思えるよ」


「ところで村上くんはディズニーは好きかい?」


 でた!急に飛ぶ西森さんの会話!だが僕はこれまでの経験からコレが伏線だともうわかっている。


「あまり興味はないかなぁ。ディズニーアニメとかは見るけどね」


「ディズニーと言えば有名なキャラがいるよね…?あのネズミをモチーフにした世界的に有名な」


「ミッキーマウスか」


「他にもハチミツとか好きなクマをモチーフにした…」


「プーさんか」


「興味ない割にはちゃんとわかってるじゃぁないか」


「そりゃディズニーだしね、世界レベルで有名だよ」


「そこでだ、村上くん。ようく考えて欲しい。ネズミ、クマ…コイツらは害獣だ!人間からしたら敵だ。ネズミは病原菌を撒き散らしたり作物を齧ったり。クマは言わずもがな、出会ったら死んだフリしろと言われるくらいには危険な生き物だ。そんなヤバい奴らを人間は何故可愛くマスコットにしようとしたのか?」


「た、確かに。でも見た目は悪くないからじゃないかな?」


「見た目か。クマはともかくネズミは確かに可愛いな。でもだよ?自分の畑を荒らされたり家族がネズミが原因の病気になったりした人が目の前にネズミのぬいぐるみとか置かれたらめっちゃ怒らないかな?」


「あー…でもそう考えるともしかしたらネズミやクマの害がそんな問題にならない世の中になったからこそ、マスコット化したのかもね。少なくとも今の日本じゃネズミで疫病は流行らないもんね」


「そう、その通り。つまり、人間にゆとりが出来たから害獣ですらマスコットにしたんだよ。豊かさや安全こそがミッキーを産んだんだ。そう考えると将来、人間はコロナやインフルエンザとかマスコットにしてしまうかも知れない!」


「ウィルスじゃん、害獣じゃないのかよ、いや少しはデザイン性も考えろよ」



今日の西森語録「ミッキーが生まれたのは豊かな証拠」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る