第7話「音と絵と」

「村上くんは音楽は聴くかい?」


 美術の授業中に西森さんが小声で聞いてくる。僕はまあ、大した事ないが西森さんは漫画家になりたいって夢があるほど絵がとても上手だ。僕に話しかけながらもキャンパスのデッサンは進んでいく。


「まあ、僕はオタクだからね。アニソンくらいしか聴かないかな」


「アニソンは私も大好物だ、今度何を聴いてるか教えてくれ」


 今じゃないんだ、今度でいいんだ…。


「昨日テレビでピアノで弾くアニソンってのやってたんだよ。独奏ってやつ?ピアノだけで演奏してて。すごいよね、ピアノだけでも何の曲かわかる。これは他の楽器もだけど」


「そうだね。楽器一つでも曲はわかる」


「コレは今私達が描いてる絵にも通ずると思わないかい?」


 つんつんと自分のキャンパスを鉛筆で突きながら言う。


「ん?どういう事?」


 絵と音楽が同じって事?今回はちょっとわからないな。


「見なよ村上くん」


 そう言って自分のキャンパスを指差す。覗き込むとさすが西森さん、モデルであるよくわからないポージングをした男の石膏像が緻密に描かれてる。上手い。


「このデッサン絵は鉛筆一本、黒一色で描かれてるが何の絵かわかるよね?音楽も一緒だ。楽器一つでもちゃんと演奏したら何の曲かわかる。でも2色、3色と多彩な色を使えば使うほど絵も華やかになるだろ?音楽も同じて色々な楽器が協奏してる方が深みがでる」


「ああ、なるほど」


 絵の色を楽器の種類と捉えるのか。確かに『使える種類が多い』程、カラーの絵は綺麗だし、音楽の演奏も美しい。


「音と絵。違う分野に見えて根っこの部分では同じ要素があると思うんだ。もう40色セットのカランダッシュとかあれば音楽で例えるならオーケストラだよ!」


「なんで色鉛筆だよ」


「今私が欲しいから」



今日の西森語録「音楽と絵は似ている」




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