第2話「働かないアリ」

「知ってる?村上くん。蟻って2割は働かないらしいよ」


 昼休み、売店で買って来た味噌カツオニギリを齧りながら聞いてくる。また西森さんが何か思いついたな?


「知ってるよ、2:8の法則だよね。働く蟻だけ集めてもその中でまた2割の蟻が働かなくなるんだよね」


「そうそう、逆に働かない蟻を集めても8割が働き出す。ところで私、昨日ホームセンターで組み立て式のカラーボックス買ってね」


 アレ?話が飛ぶな?働かない蟻の話は終わり?


「文庫本が増えすぎて本棚を増設しようと買ったんだけど。村上くんはカラーボックス組み立てた事ある?」


「あるよ。安いし手頃だしホームセンターで手に入るし、いいよね」


 めっちゃわかる。僕も本棚が漫画で一杯になり買った事はある。そろそろもう一つ欲しいが部屋に置く場所がないのが悩みだ。スマホを手にしてから電子書籍で読む事多くなったけど、西森さんはまだスマホ持ってないもんな…。


「そしたらさ、組み立てた後ネジが一本余ったんだよね」


「ああ、余る。というか予備のネジだよね?アレ」


「そう!あれは予備!紛失したり不良品が混じってた時用の予備!でもアレは何もなく無事にカラーボックスを組み立てれたら使わない、つまり働かないネジだ!」


 んんん?働かないネジ???面白い表現使うな?


「つまりだよ、村上くん!アリンコ達は常に2割は働かない!これは使わない、働かないネジと同じで予備のアリさんではなかろうか!?」


 いきなりブッ飛んできたな!?まさに西森節!


「その発想はなかったよ…西森さん…確かに毎回1割でも3割でもなく2割『働かない』って不思議だもんね…予備の蟻って考えは僕にはなかった!」


「アリさんも怪我したり、なんなら他の生き物に食べられたり、普通に踏んづけられたりして働けなくなる奴がいると思うんだよね」


「そういう時に予備の蟻が働き出すのか…」


「そう!でも何事もなく無事に蟻社会が回ってたら予備のアリンコは一生働かなくていいと思うと羨ましい!私も予備の人間になりたいッ!」


「何だよ予備の人間って」


 言ってる事は無茶苦茶だが言わんとする事は何となくわかる。予備の蟻か…。




 今日の西森語録「働かない蟻は予備の蟻」

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