西森さんと村上くん

アキ

第1話「竜と虎」

「ドラゴンっているよなァ」


 昼休み、隣の席の西森さんがサンドイッチを頬張りながらコーヒー牛乳を片手に言う。西森さんはオタク仲間だ、よく漫画やアニメ、ラノベについて語り合う。今日も何かに影響されたのかな?


「よくファンタジーとかで聞く、空想の生き物だけど、誰もが知ってる生き物、ドラゴンだ」


「そうだね、僕も知ってる。ファンタジーでは定番で強さの象徴みたいな所あるよね」


 ちょっと長めのポニーテールの黒髪を肩の上で弄りだす。西森さんがオタク語りする時の癖だ。


「そう、村上くんも知っての通り、ドラゴンはだいたい強そうなポジだ」


 そこまで話して一気にサンドイッチの残りを口に放り込む。


「でもさァ、昔から中国?とかの諺に『龍虎相撃つ』とか言うじゃん?龍のライバルは虎!みたいに…。つまりだよ、村上くん!つまりはドラゴンって実は『虎ぐらいの強さ』なんじゃないか!?」


 確かに龍と虎はよく互角の様な意味合いで引き合いに出される。龍虎相搏とか龍虎図屏風とかあるし。


「何が言いたいかって言うと、実はドラゴンってそんなめちゃくちゃ強い生き物じゃなくね?」


 なるほど、それは盲点だったな…考えた事すらなかった。架空の生き物であるドラゴンを現実にある諺や故事にその強さを検証するのか。


「確かに西森さんの言う事も一理ある…様な気はする。でもでもさ。龍って…ドラゴンと違くね?」


「いやいや、龍とかいてドラゴンて読む事も多いし龍を竜と書いて竜虎相撃つて書く場合もあるし!」


 そもそも、ドラゴンや龍は架空の生き物だから定義が曖昧だけども。


「ただまあ、西洋にはドラゴン、東洋には龍。国や表現は違えど似たような架空の生き物が共通して居るのは面白いね」


「きっと虎くらいの強さだけどな」


「虎も十分強いよ、人間じゃ勝てないよ!」


 あはははっと二人で笑い合う。



 今日の西森語録「ドラゴンの強さは虎ぐらい」

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