50日目
鉄格子で隔てて、祖母と孫の感動の再会。
とはいかず。
「村を捨てたからに決まっとるやないけ!」
顔を真っ赤にした老婆は、魁の祖母にあたる人物。俺も小さい頃から付き合いがあるばあさんだ。
こんだけ怒ってんのを見るのは、よそからふらっと「車で迷っちゃってぇー」などと言いながらやってきたチャラチャラしたガキどもが俺らの守り神に小便を引っ掛けたあん時以来だべ。普段は穏やかな人なんよ。
連中は漏れなく守り神が食っちまったな。
残飯処理? いやいや。俺らの守り神を悪く言っちゃいけないよ。
「あんたなんか、うちの孫やない!」
「まあまあ……」
俺が窘めても、ばあさんは罵詈雑言を止めない。だんだんボキャブラリーが減っていくのではたから聞いているぶんには面白いのだが、立場上笑うわけにはいかない。サキガケ(仮)のほうは「ほー✨」と何やら感動しているようだ。
なんでや?
「初対面でぼくを魁ではないと見破ったのはアナタだけです✨」
鉄格子の隙間からばあさんに向けて両腕を伸ばす。俺も初日から疑ってたべ。俺は数に含まれてねえってか。
「ハグしましょう✨」
いや、無理だべ。
「せんわ!」
せやろな。
「おじさぁん、なぜバレたのでしょう? ぼくはこんなにも完璧に、魁であるというのに。ですよ✨」
俺をおじさん呼びするのはやめてけろ。おじさんだからしゃあなしとはいえ。おめえが本当はいくつなんだか知らんけどよ。
それに。
「そういう言い方が『ニセモノです』って、わざわざ言っているようなもんだべさ」
50日経って、日数は残り半分となった。だからこそ、肉親であるばあさんを無理矢理連れてきたんよ。いやあ、初日から交渉はしてたんやけどなあ。ばあさんまで「会いたくねえ」ってんで。言うても、
ばあさんのおっしゃる通り、魁は村を捨てたカスだべ。
スカウトされて芸能界入りだあ? 体よく村から出て行っただけやないけ。――なんて、年寄りの間では難色を示す者が多かったからな。喜んどったのは若いもんと女どもだけってんだよ。そんであんな事故に巻き込まれてんだから「祟りじゃ」言うてな。
「なるほどです✨ いやー、ここに来てから勉強させてもらいっぱなしですね✨ ぼくとしては、このご恩には報いねばならぬと思うわけですよ✨」
おとなしく捧げられてくれよ。俺に恩義? 俺が何をしたってんだべ。
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