99日目
「おめえ、本当はなんて名前なんだべ?」
「魁ですよ✨」
「……まあ、ええわ」
相変わらずの調子で魁を名乗ろうとする宇宙人に一汁一菜を運ぶ生活も明日で終わる。99日目。儀式は太陽が沈んでから行われる予定となっていて、外では祭壇を組み立てているところだ。
「鬼と
「そうかい」
「画面の前の皆さんも、覚えておいてください✨」
スケッチブックと、短くなった鉛筆に目線を向けたら「あ! そうだそうだ!」と箸を置いてスケッチブックを手に取る。
「イラストはプレゼントフォーユーです✨ 肌身離さず持っていてくださいね✨」
俺が食事を持ってくる以外は何もすることのない生活だからか、スケッチブックには表と裏にびっちりとイラストが描かれていた。最初はへのへのもへじ以下だったが、こう見ると徐々に上達していっている。日々コツコツと努力を積み上げていけばこうなるんやな。最後のページには、剣が描かれている。何の資料もなしにここまで描けるもんなんか。
とはいえだ。
「もらってもなあ」
明日には守り神に捧げられる人間からの贈り物。……受け取っちゃいけねえという決まりはないんだが……。
「ぼくとおじさんとの友情の証ですから✨」
「そうかい……」
友情かあ。
コイツは俺と友だちになったつもりなのだろうが、俺はそうじゃない。俺がこうして世話してやって、取り止めのない会話をしてやっているのも、すべては明日のため。10年ぶりの儀式を滞りなく遂行するためにやっている。
「おじさん、ぼくたちの仲間になりませんか?」
油揚げの入った味噌汁を啜ってから、サキガケ(仮)は勧誘してきた。コイツ、明日の夕方には死ぬってことを忘れちゃいないか。
「おじさんは物知りですし、ぼくたちの他星侵略を手伝ってもらえたら」
「おめえ、明日は村の守り神に会うんだべ?」
「覚えてますよ✨ ずーっと楽しみにしてました✨」
ニコニコしながらほうれん草のおひたしを咀嚼しているこのサキガケ(仮)はどうやら生きてこの村から出ていく気でいるようだ。俺らの守り神がそれを許すと思うのか?
「まあ、考えておくよ」
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