第14話 ≪掲示板≫まとめスレ と 陰謀

【ノグチさん】史上最強の使い魔、ノグチさんについて語るスレ. 342【養って!!】


1:名無しのお隣さん

おまんらみたか


2:名無しのお隣さん

みた。やばかった


3:名無しのお隣さん

まさかノグチさんが調合配信するだけかと思ったら新レシピの公開とはな


4:名無しのお隣さん

あれは完全に想定外なんだよなぁ


5:名無しのお隣さん

レシピ通りに作ったけど簡単すぎて困惑してる

今までの解毒ポーションなんだったんや


6:名無しのお隣さん

トラップエリア本当に攻略できたんだけど


7:名無しのお隣さん

完全無効化ってよりかは、毒素分解って感じだな。


8:名無しのお隣さん

いやそれでもすげーだろ。

ダンジョンモンス食えるようになるんだぜ!


9:名無しのお隣さん

サラダにドレッシングにぶっかけただけで

安全にトラップエリア攻略できるようになった件について


10:名無しのお隣さん

ダンジョン版完全飯ってか


11:名無しのお隣さん

まぁこれだからなぁ↓

【解毒ドレッシング】

 毒耐性(中)――持続効果、12時間。

 回復活性(微) ――持続効果、6時間


12:名無しのお隣さん

漏れ鑑定スキルに効果時間ついたの初めて見た


13:名無しのお隣さん

俺だって初めてだよ。

しかもこの回復活性ってなに⁉ なんか何もしてなくてもちょっとずつ治るんだけど


14:名無しのお隣さん

あの言い方だと、まだまだ新しいレシピ持ってるんじゃね


15:名無しのお隣さん

持ってんだろーな。だってノグチさんだし


16:名無しのお隣さん

ああ、それは確かに


17:名無しのお隣さん

しかもマジでうめぇの

中層だと基本、保存食しかないから食べられるのマジありがたい


18:名無しのお隣さん

え、料理にすると効果だけじゃなく、回復量も変わるってこと?

どんな効果だよ


19:名無しのお隣さん

多分それぞれの素材のブレンド具合が違うんだと思う

ポーションは一瞬だけど、こうはいかん


20:名無しのお隣さん

後方支援スレ、ヤバい盛り上がりだったぞ

まぁあんなもん見せられたらお祭り騒ぎになるのもしゃーなしだけど


21:名無しのお隣さん

ああ、ついに俺たちの時代が来たって言ってたな


22:名無しのお隣さん

レシピの質がヤバい。

うちのリーダーマジで勧誘考えてる。


23:名無しのお隣さん

マスコットだけじゃなかったんだな

ガチで攻略必須やんノグチさん


24:名無しのお隣さん

そりゃSランク探索者にコラボ依頼されるくらいだもん。

誰だって養ってほしいだろ上皇


25:名無しのお隣さん

俺、後方支援だけどファンになった。


26:名無しのお隣さん

あー毛並みにモフモフしたい


…………


546:名無しのお隣さん

それに比べて大家は


547:名無しのお隣さん

うん、すごいんだろうけどあれだな


548:名無しのお隣さん

ダメな大人だな


549:名無しのお隣さん

テイマーとしてどうなんアレ?


550:名無しのお隣さん

ダメダメ、うちの会長が激怒で人殺しちゃうレベル


551:名無しのお隣さん

まぁほとんど、ノグチさん任せだしな

その評価もしゃーなし


552:名無しのお隣さん

そもそも使い魔が人間以上に賢いことに疑問を思うべき


553:名無しのお隣さん

一応新入りのためにまとめておくと

「大家の伝説

・大炎上

・女神に服毒

・ノグチさんのペット

・迷惑配信者撃退

・服毒配信――NEW


554:名無しのお隣さん

それに比べてノグチさんは最高だよな


555:名無しのお隣さん

ノグチさんの偉業の数々

・ヴェノムドラゴン撃退

・女神を救う

・家事スキル完璧

・各分野のSランク配信者から単独コラボ勧誘

・新レシピの開発――NEW


556:名無しのお隣さん

俺、テイマーになろうかな


557:名無しのお隣さん

やめとけ、あのレベルのモンス使い魔にすんのマジむりだから


558:名無しのお隣さん

モンステイムの条件って一種の服従だっけ?


559:名無しのお隣さん

Sランクモンスを服従させるって

なにそれ無理ゲー


560:名無しのお隣さん

つかあの大家どことも契約してないってマ?


561:名無しのお隣さん

いまの冒険者のほとんどはどっかしらの事務所と契約してるんだけどな


562:名無しのお隣さん

まぁソロの方が制限されなくていいし、企業とタイアップなんてなったら制限される


563:名無しのお隣さん

だからあんなど派手な炎上配信できるわけだし


564:名無しのお隣さん

わざと勝手レベルで各方面を芳ばしくしていくよな


565:名無しのお隣さん

企業なんてノグチさんぜったい欲しいだろうに


566:名無しのお隣さん

そりゃ、あんなトンデモレシピを平然と作るんだからな


567:名無しのお隣さん

調合業界の革命猫現る!


…………


987:名無しのお隣さん

【速報】大手配信事務所の三社、ノグチさん争奪戦勃発


988:名無しのお隣さん

あれだけ優秀で最高の素材があれば当然だろ上皇


989:名無しのお隣さん

むしろ遅いレベル。

畑にプラントドラゴン生えてるアパートってどんな環境?


990:名無しのお隣さん

いやさすがにそれはフィクションだろ。

プラントドラゴンの素材が栽培できるとか出来たら天地開闢レベル


991:名無しのお隣さん

いや、あの言い方ぜんぶガチじゃね?

倒したうえで、栽培方法を確立したとか


992:名無しのお隣さん

アレを単独で? どっちにしろ化け物杉んだろ上皇


993:名無しのお隣さん

やりそうなのが怖いな。

入るとしたらどこ入るんだろうな


994:名無しのお隣さん

クズクラだけはやめてほしいな


995:名無しのお隣さん

漏れたちの期待の新人なんだからなー


996:名無しのお隣さん

まぁノグチさんが何とかするっしょ


997:名無しのお隣さん

使い魔だぞ? 冒険者に勝てんのか?


998:名無しのお隣さん

長年攻略手間取ってたヴェノムドラゴンをワンパンぞ? 

強いに決まってるだろ


999:名無しのお隣さん

三社がノグチさんを争奪戦か。胸が熱くなるな


1000:名無しのお隣さん

飼い主の方がおまけってのがまたらしくて草(笑)


・・・・・・

・・・


 そしてダンジョン掲示板がこれまでにない盛り上がりを見せ、『やっぱノグチさんに養ってもらいたいよな』とスレ民の心が一つになった頃。


 高価な貴金属や希少なダンジョンアイテムで埋め尽くされた薄暗い執務室で、やや年のいった男の怒鳴り声が部屋なのかでこだました。


「ぐぬぬぬ、なぜだ! なぜこうもうまくいかないのだッ!」

 

 クズクラ配信探索事務所――代表取締役社長。

 葛蔵エイゾウ。

 一代でダンジョン特需の波に乗り、数多の探索者を使って莫大な利益を築いてきた男は、部下の書いた報告書に目を通していた。


 内容は『ダンジョンにおける拠点開発の極秘計画参加』の可否について。


「くっそ、あの最前線のダンジョンに拠点を築けば間違いなくこの世の覇権がとれるというのに! どいつもこいつも簡単に手のひらを返しおって!」


 葛蔵に啖呵を切ってきたあの威勢のいい小娘の顔を思い出し、『探索者の分際で!』と手に塩かけて準備してきた配信者の退職届をぐしゃぐしゃに丸め、床にたたきつける。


(あの娘さえ、あの娘さえ裏切らなければ大儲けできるはずだったのに!)


 三社合同のダンジョン拠点計画。

 

 当初、ダンジョンの最前線に拠点を作り、企業を誘致することで探索者や企業から莫大な金を搾り取るはずだった計画は、一人の新米配信者の配信事故によってすべてが水の泡と化した。


 結果、クズクラ事務所は莫大な負債と悪評を背負い、三大配信事務所の地位からふるい落とされようとしていた。


「それもこれも、すべてアイツらのせいだ!」


 葛蔵と同じように炎上したにもかかわらず、飛躍的な成功を遂げた女と猫が映る画面を睨む。


 まさかこんな庶民どもが、葛蔵の長年探し求めていたセーフティエリアをすでに占有していたとは。


 葛蔵の予定では、新米探索者の救助の名目で、事務所にいる全探索者を動員し、最前線拠点に防衛基地という名の拠点を作り、大々的に誘致するつもりだった。

 実際そこまでのたくらみは成功していたし、配信ドローンの細工も完璧だった。


 そう、たった一匹の猫畜生の介入するまでは!


「期待の新人の弔いのためといえば、世間も政府の目も簡単に欺けたというものを! あの小娘を売り出すのにいったいいくら投資したと思っているんだ!」


 ドンと執務机を蹴りつけ、剥げかかった頭を抱える。

 

「くっそ、奴らにあの場所を奪われるわけにはいかない。あそこはワシが追い求めてきた土地だ! 誰にも渡すものか!」


 しかし、肝心の連絡役になりそうな恥知らずは辞表を出してどこかへ消えてしまった。いったいどうすれば――


「ならばいい方法があるのですが」

「その声は――」


 そういってタイミングを見計らったように正面の扉からノックが鳴り、空いた扉から細身なスーツ姿の男が現れた。


「おおっ、根岸くん帰ってきたのか! どうだった交渉の方は」

「ええ、社長のご指示の通り。クズクラ有利の条件で完璧にでまとめてきました」


 そういって渡される契約書には、有名な配信者の名前が。


「おおよくやったぞ根岸君。君は他の使えない愚図と違って、優秀だな。有名な探索者はみなプライドが高く勧誘に苦労するというのに」

「恐縮です社長。しかし探索者など所詮、承認欲求の塊な社会のクズですから。我々がうまく使ってやればこの通りですよ」


 眼鏡を押し上げ、にやりと笑う根岸。

 どうやら、相当えげつないやり方で事務所との契約を取ってきたらしい。

 素晴らしい。それでこそ我が事務所が誇る配信統括マネージャーだ。


「それでさきほどいい方法があると言っていたが、この状況を打開できる策があるというのは本当かね?」

「ええ、話題の彼女ら。あれらを手に入れてしまえばいいのです」

「できるのか⁉」


 事情はどうあれ、あの猫はどこの事務所が欲しがる逸材だ。

 いくらクズクラ事務所が、最も多くの配信探索者を抱えた事務所だからと言って、競合は容易ではないはずだが、


「さきほどの配信を見た限り、勧誘は容易でしょう」

「そうか。その言葉を聞いて安心したぞ」

「ええ、ですので社長。わたしに政府公認の『迷宮コネクション』を紹介していただけませんか?」


 迷宮コネクション。


 それは、ダンジョン配信事務所と日本政府が結ぶ秘密協定の一つで。

 政府にダンジョンから得た希少なアイテムや情報を優先的に流す代わりに、政府高官にダンジョン関連の法律や委託先を融通してもらうなど、一部の上流階級に属する者が受けることのできる特権の一つだが、


「いくら君でもこればかりは難しいかもしれん」

「ええ、社長が渋るのはもっともです。ですがこうすればいいのです。ちょっとお耳を――」

「なになに? なんだとそんな方法があるのか⁉」

「ええ、ですからわたしに任せてはもらえませんか。必ず成功して見せます」


 基本的に、それなりの地位に立つ者しか知られない秘匿情報だが、たしかに根岸のいう通りだとすれば、あの猫を奪えたとなればその価値は計り知れない。


 マネージャーは優秀だ。

 数多の才能ある若者を見つけて、引き抜いてきた実績がある。

 事務所にもよく尽くしてくれている。その手腕は信用できる。


「よし、それであの猫が釣れるのであれば、ワシが大臣に口利きしてやろう! そのために、どんな手を使ってでも他社より早くあの猫を確保するのだ!」


 すべてはクズクラの野望のために!

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