ふーん・・・・・・・なにそれ?







「宿、一泊お願いします」


「一部屋でよろしかったですか?」


「あ、はい」



 ・・・・・・・やばい、緊張ががががが


 おちつこ、落ち着こう。

 もちついて、おいつて、おちついて。


 冷静に、最小限の会話で!

 最適解を!



「では、銀貨6枚となります」


「へぁっ?」


 ぎんか? 銀貨のことか?


 ・・・・・・あれか、金のことか!


 ん? あれ、金あったっけ?

 え、ええと、ポケットの中は・・・・・・


 あ、あれっ?


 あ、こっちか!

 なぁんだぁ、ビックリさせないでよ!

 さぁ、さっさと払って・・・・・・・


 ん? お、おかしいな・・・・・・ないぞ?

 こ、こっちは・・・・・?



 ―――2分後



 まぁ、無いことは分かったな。


 そろそろ受付のひとキレてると思う。

 まぁこんな時間かかってたら当然だよね。分かるよ。


 うん・・・・・・よし。多少第一印象がワルになるが、しょうがない。


 最終手段だ!



「ネル、お金って持ってる?」


「おかね?」


「うん!」



 頼むよ!

 ネルが最後の頼みの綱なんだ!



 これなかったからまじでヤベーから!

 ・・・・・・ゆーてそこまでの程ではないな。うん。


 まぁ、野宿になっちゃうから!

 マジで!


 背に腹はかえられないんだ! ハハッ!


 頼むっ!

 お願いっ!



「・・・・・・・・ない」


「・・・・・・ない・・・・、のか」



 ・・・・そっか。


 そんな都合よくいくはずもないか。


 まぁ、そうだよね。

 こういうのって、持ってないまでがテンプ

 レってもんよ。


 ポジティブに!

 そこまで深く考えずに!



『・・・・・・僕に言ってくれたらいくらでもあげたのに、結局その女に頼るんだねっ』



 ん?

 この声は・・・・・・・ラフィ?



『ふんっ、だ! ルナなんかもう知らないっ!』


「えぇ・・・・・」



 謝っても許されない感じかな。これ。

 多分そうだよね。

 前もこんな感じだったもん。


 うん。知ってる。

 もう見た。


 デジャヴですね、はい。



「ねぇ、どうしたの?」



 一応、理由くらい聞いておくか。

 なんかあるかもだし。



『6000年間、まったく音沙汰がなかったアイツがなんで一緒に―――――』


「ん? なんて?」



 囁き声で喋るのって、意外と聞こえにくいんだよ?



『っ、なんでルナがその女と一緒にいるんだ! 説明してもらいたい!』



 なんだ、そんなことかいな。

 ならば答えは簡単だ!



「まぁ〜、約束? したから!」



 そう、約束!


 ずっと一緒ってね、約束したんだってよ。

 どこの誰かさんと間違ってるかは知らんが。


 本人がずっと一緒って言ってるんだから仕方ないよね?



『やく・・・そく・・・・!?』



 ・・・・・なぜそんな悔しそうな声を出しているんだ?

 約束って、そんなに大切なものだったのか?


 うーん。1ミリも思い出せないんだよね。

 まぁ、人違いだろうしそんなこと気にしても思い出せないんだろうけど。



「あるじっ・・・・・・・?(泣)」



 あ〜・・・・・、放置してたの忘れてたな。


 しかも、なんか・・・・・・かわいい。


 うるうるしてる! 涙目になってる!

 かわええなぁ・・・・・


 うるうるしてるの見るともっと泣かせたく、虐めたくなる・・・・・・・おっと、いかんいかん。


 僕が黙っているからか、もっと泣きそうになってきている。

 さっさと答えないと。



「お、怒ってないよ? ただ、怒らせたというか・・・・・・勝手に怒っただけと言うか・・・・・・」


「う? そう、なのっ・・・・?」


「う、うん。そうだよ? まぁ、あとで何とかするから大丈夫、大丈夫!」



 はい、うん。まぁ・・・・・・、強がりだ。


 だってさぁ、前のやつ見た? ラフィの。

 あれ想像以上に宥めるのに時間かかってるんだよ?

 走馬灯みたいにさ、時間が長く感じるし。


 あれを『またやるのかぁ・・・・』って思うと、泣きそうになってくるよ。


 まぁ、本当は強がっても意味はないと思うけど、ネルに心配させる訳には行かないしね。



「そうなの? よかったぁ♪」



 かわいいな。

 永久保存しよう。脳内に。

 一生忘れることのないように、触っておかなければ、感触を確かめなければ。

 頭を撫でてやろう。



「うゅ・・・・あるじ、恥ずかしい・・・・・・///」


「・・・・・・・お姉ちゃんって呼んでよ」


「う? お姉様?」


「あぁ・・・・・・・・」



 楽園エデン、ここにあり。

 ぶっちゃけ天国なんて行かなくてよくねぇ?

 ここにあるんだし。


 というか、未だに魂集めとか理由が分からんのよね。

 どこにあるかも分からんし。

 いや、そこは自分で探せってことか・・・・・・


 うん。めんどくせ☆



 いやちょっと。

 真面目に考えよ。ね?


 うーん。そうだなぁ。

 よし!


「金がないなら稼げばいい!」


「あるじ?」


「いっちょ賭けでもしてくるか!」


「賭けるモノないよ?」



 うーん。

 しょうがなし。ハイリスク・ハイリターンだ。



「自分自身を賭ければいい」


「・・・・・え?」


「実質的な支配権。勝った奴らが相手の全てを奪う」



 そう。文字通り。全て。


 ・・・・・というかそうじゃなきゃ、こっち側のデメリットが相手のメリットと釣り合ってないから。


 やっぱ賭けって、勝ったヤツが全てを手にするっていうルールが1番しっくりくるんだよなぁ・・・・・・



「と、いうわけで、今から―――――」


「だめ」


「・・・・・?」


「だめっ!」



 ・・・・急にどうしたんだ?

 一気に金を稼ぐチャンスだっていうのに。



「・・・・・あるじは、いつもそう。自分を大切にしない」


「・・・・・・どうした?」


「自覚。あるでしょ?」


「・・・・・そうかい」



 会話、できなくない?


 まぁ、答えておくか。


 とうの昔に知ってるよ。そんなこと。

 そして、自分が "孤独" がこの世で1番嫌いなことだとも知っている。


 ……元々、自分というものに興味がなかった。


 自分は自分。

 それ以上でも、それ以下でもない。


 それでいいと思っていたから。


 まぁ、昔って言ったっていつなのか分かんないんだけどね。

 ネルなら知ってるのかな?



「ネル―――――」


「欲しいのは貴女との時間、いっしょにいたいだけなの!」


「・・・・・時間?」



 うーん。分からん。



「 "あるじ" と一緒に、いろんな物を見て。おかしくなるくらいに、笑いあって・・・・・」


「・・・・・・・」


「たまには、喧嘩。したりして」


「・・・・・・そして?」


「『あんなこともあったよね』って、思い出せるように、したいっ」


「そう」


「浅いかもしれない。わからないかも、しれない・・・・・・・でも、貴女を想う気持ちだけは、譲れない」



 ・・・・なんでこんな重たい話になったの?


 この際、気になってたこと聞いちゃった方がいいかもな。



「ひとつさ、聞いていい?」


「・・・・・・」


「なんでそんなに、僕のこと。気に掛けれくれてるの?」


「・・・・・・」



 なんか怪しいな。

 疑ってるわけじゃないんだけどね、ネルのこと信頼してるし。



「・・・・なにか、思い出せること。ある?」


「ネル? なんで急にそんなことを」


「いいから!」



 うーん。

 ・・・まさか本当に約束したことあるのか?

 ネルと。


 ・・・・・いや、そんなことないか。



「ネルは何か覚えてることあるの?」



 すこしでもキーワード的な、そういうもんがあれば思い出せるかもしれないし、ネルなら何か知ってそうなんだよなぁ。


 ・・・・というか今、何の話してんの?


 最初はお金のこと言ってたんじゃ・・・・。

 そこから記憶の話って飛躍し過ぎなのでは?


 話が飛びすぎてもう何がなんだか分からんよ・・・・・


 そういやラフィはどっか行ったな。



「 "約束" と、"使命" があった。それだけしか、覚えてない」


「使命?」



 約束はわかる。

 勘違いしてるやつでしょ? 知らんけど。


 けど、使命ってなんだ?


 あれか? ヒーローは命を救わなきゃならないとか、そういうあれか。多分そうかも。



「使命。絶対者って呼ばれる六人に与えられた "枷" のこと。鎖って言ってもいい」


「ふーん。縛ってるってこと?」



 呪いみたいなもんかな?

意外と合ってたりして!



「あるじにもあるよ。使命。多分だけど」


「・・・・・・・ん!?」



 マジ?





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