ネルの思い出









「うまっ!!」



思ったよりも美味しいぞ!

この肉は!


ネルにも食べさせてやろう。



「う? 「ほら」 んっ、・・・・・おいしい」


「ね。意外と美味しかった」



そしてこの町、意外と広い。


国よりも国って感じがする。


町の方がより国っぽいなんて、どういうことだよって思うかも知れないけど、ガチめに事実だ。


本当に国かもしれないけどね。


国だったら外から見ても分かるかもしれないんだけどなぁ?


まぁ、そんなことは置いといて。


観光を楽しむとしましょう!




――――――――――――――――――――




「あるじ・・・・・、元気いっぱい」



あるじが楽しそうで、ネルも、嬉しい。

幸せで、心がいっぱいになっていく。


今、あるじがいて、愛されて。

よかったって、思ってる。


・・・・昔のネルは、あるじのこと。嫌いだった。


初めて会った時は、あるじのこと、変なヤツって、思ってたから。


そして、なんでも見透かしてくるように。

心をそのまま覗かれているような。


そんな、あるじの目が。

嫌いだった。


・・・・でも、今なら分かる。


心配、してくれてたんでしょ?


ネルが、道を踏み外さないように。

正しく。ネルが、ネルで。在れるように。


だから、あるじがいないと、生きられない。


あるじのいない世界なんて、生きる価値を見いだせない。


ひとり、寂しく、在るだけに、なる。


昔のネルは、そんなことも分からずに。

日々を大切に、過ごしていなかった。


だから、あるじが一度、いなくなってしまった時には。


『・・・・・・・・ひま。全部、おもしろくない。なんで?』


って、思ったりもした。


ある日、知り合いが、遊びに来て。

それも、楽しめなくて。


言ったの。



『・・・・・毎日が、楽しくないの』



そう言ったら、



『あの人が居ないからじゃないの?』



って、返ってきて。

確かにそうだ。って、思った。


今まで好きだったものも。

楽しめていたものも。


全部。全部。


あの人がいなくなってから、楽しくなくなってしまって。


いつからか、あの人のことを忘れようと、努力した。


でも、無駄だった。


忘れようとすればするほど、あの人が脳裏に染み込んできて。


そのうち、忘れたくないって、思うようになった。


あの人からしてもらったことを、思い出せばだすほど。


涙が止まらなくて。

会いたい。って、思うようになって。


会いに行こう。って、そう思った。



そして、思い出した。


あの日、冗談交じりで言った。


あの、約束。


内容は、『死んでも必ず会いに来る』みたいな、ありきたりな、そんな感じだった気がする。


そんな、冗談で言ったような約束だって。


あの時のネルは、信じた。


だって、会いたかったから。

会いに来るって、約束したから。


待った。それから。

ずっと。待ち続けた。


待って、待って。


いつ来るのかな?

帰って来るのかな?


何回も、そう思った。



ある日、こんなことを口ずさんで。



『・・・貴女が奪っていったんだ。


ネルの見ていた世界から、色を。


新品にして、返してもらわないと。


・・・・・・勝ち逃げなんて、許さない』



そして今、約束を守ってくれた。


もう二度と、会えないかもしれないと。

そう、思っても。


約束を、ネルを、あるじを。

信じたから。


こうして、また会えた。


もう。あんな思いはしたくない。


大切な人を失った世界なんか、もう、味わいたくない。


あるじのことは、ネルが守る。









・・・・・・・結局、何が言いたいの。って?












あるじのこと、愛してるよ。

これまでも、これからも!


ずっと、ね。




――――――――――――――――――――




・・・・・なんか、ネル。ぼーっとしてるくね?


やっぱ、そんな楽しくなかったかなぁ・・・・・。



「あるじ」



? どうしたんだろう?



「手、つなご?」


「っ、手?」



手・・・・・・・・、ふふっ。



「いや、だった?」


「ううん。つい、嬉しくてっ!」



嬉しいっ。

人肌ってこんなに安心するもんなんだな。



「あるじ、今日は、ネルがエスコートするね」


「えっ?」


「ふふっ、大丈夫だよ。守ってあげるから」


「・・・・ネル」



そのときの微笑みは、まるで、天使が舞い降りたように。

点数を付けるなど、おこがましいほどの。


最高の相棒パートナーの姿がそこにあった。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る