暴走 (夜久視点)



ひとつ、違和感というものを感じておる。


何がって?


あそこに倒れ込んでおるルナのことじゃ。


傍から見れば、意識を失っているように見えるじゃろうが、年の功と言うべきか。


むやみやたらに近寄らない方がいい気がしてきたのじゃ。



「・・・・・・来ないの? ・・・・・ちょっと、想定外・・・・・。」



ほれ、こういうことがあるから気が抜けないんじゃ。


まったくぅ、やれやれなのじゃ。



「かわいい弟子が取れたとおもったら、こんなサービスまで付いてくるとは思いもしなかったのう。」


「・・・・・主人あるじ、の、こと、大切、なら、・・・・こんなこと。・・・なんで?」


「・・・・・こんなこと、とは?」


「また、・・・・やるのか。卑怯者。」


「おぬしとは初対面のはずじゃが?」


「・・・・・今更、なに? もう、手遅れだよ。」


「・・・・・・なにがじゃ?」


「分からないのなら、死んでおいて。」


「何を―――――」

そのとき、夜久の脚に三発の銃弾が撃ち込まれた。


「―――チッ!」


「貴方なら、その程度、なんてことないはず、だ。」



見た事のない武器じゃのう。

受けた感触からすると、鉄の塊を飛ばす武器じゃな。

しかも、受けたところから血が溢れ出して止まらんのじゃ。

さては、儂が吸血鬼だということを知っておるな?



「貴方は吸血鬼。それに、昔。戦ったこと、あるよ?」


「ハッタリは程々にしておくが良いぞ? まぁ、もう手遅れかもしれんがのう?」



傷はもう癒えた。

畳み掛けるとするかの。



「・・・・・人の話、聞いてた? 戦ったって、言ったよ?」



「まさか―――――」

防御を―――――――!!



「遅い。主人あるじよりも。」


「ッ、! ―――――痛いんじゃが?」


「似合ってる、よ?」



ふぅ、やられたのは、目。

しかも切られておる。

弾を飛ばすやつとは違うやつのようじゃの。

・・・・しかも、傷口に聖の力が纏っている。

治るのには時間がかかるのう。

しかも、儂の動きが読まれておる。

はっきり言って面倒なのじゃが?



「そのナイフ。どこで手に入れたのじゃ?」


「貴方には、関係、ない。」


「つれないのう?」


「関係ない、と、言ったはず。」


「これでも儂、ルナの師匠なんじゃがのう?」


「・・・・・・なんで、主人あるじのこと、助けたの、?」



そんなもの、答えは最初から決まっておる。



「吸血鬼を魔族の頂点に立たせる。」


「そのために助けたのじゃ。」


「・・・・・主人あるじは、貴方を好き、だったよ?」


「・・・・・・そう仕向けたんじゃ。」


「―――――!!」


「いつ、だったかのう。」



あやつが儂に接触してきてから、変わってしまった。

全部。なにもかも。



「―――――――うん、了解。」


「ルナによろしくの。」


「任、された、!」



安心じゃの。もう。



「じゃあの。」


「また、ね。」

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