第26話 闇魔法(1)
私は、土魔法で、50cmほどの土人形をつくり、闇魔法の「魂の複製」で、私自身の魂を複製し、「魂の刻印」で、その魂を土人形に刻印した。これで、土人形の完成だ。この土人形を更に加工して一見して人間と思うようにした。ただし、顔だけはアレンジして、私の顔とは違うものにした。
「魂の複製」で得られた魂は、従魔契約の様に、主従関係が成立している。つまり、複製した者の命令に従うということだ。ただ、魂を持っているので、その魂の意に反することには従わない。
早速、土人形に指示を出して、動作を確認した。最初なので、簡単な作業だ。
工場横に作っている薬草畑から、ベースハーブを採取し、アイテムボックスに入れるというものだ。
土人形は、ゆっくりだが、確実に仕事をこなしていった。ベースハーブをすべて採取し終わると、私の所まで戻ってきて、動きを止めた。
実験は、成功だ。当面の作業はこの土人形に任せることが出来そうだ。
地道にキリ姉には内緒で始めた研究だけど、やっとお披露目できる。キリ姉には、私の魂を刻印していることは内緒にしておいた。変な心配をさせたくなかったからだ。
「コン、コン。キリ姉、起きてる?」
「ちょっと待って、今起きるから」
やっとできた自立型土人形を一番にキリ姉に見せたくて、朝早くから、準備した。パープルも、私を手伝ってくれた。今は、私の腰を抱きしめて、フサフサの尻尾を振っている。
「どうしたの。こんなに朝早く」
「ごめんね、起こしちゃって」
「もう起きてたから、いいよ」
キリ姉を急かせながら、私達の工場にやってきた。
「キリ姉、早く中に入って」
「なによ。そんなに急かさないでよ」
「いいから、いいから」
嬉しそうにしている私の影響か、パープルも飛び跳ねている。
「ジャジャジャジャーン。自立型土人形です」
「何? その自立型土人形って。聞いたことないよ」
「私が作ったの」
「ゴーレムを?」
「じゃなくて、自立型土人形よ」
「だから、その自立型って、何よ!」
私は、怒り出したキリ姉にこれまで隠していた研究を初めから説明した。細かいことはかなり端折ったが、凡そは理解してもらった。
「何だか分からないけど、凄いわ」
私は、パープルをキリ姉に預けて、少し離れた場所の自立型土人形に命令を出した。
「ハイ、ワカリマシタ」
簡単な作業だけど、工場の機械をうまく動かして、製品の部品を作り出した。
「うまく動いているようだけど、イマイチわかんない?」
「凄いでしょ、今の見た!」
「見ているわよ。でも、ゴーレムが動くって、普通よ?」
「そうか、ゴーレムって、動くよね」
「今更、何を言っているの。ゴーレムが動くのは、当り前よ!」
キリ姉は、怒り出した。たしかに、ゴーレムが一人で動くのは当たり前だ。さっき、うまく説明したつもりだったが、キリ姉には、伝わっていなかったようだ。
「ごめんなさい。説明が悪かったみたい」
「うん? どういうこと。あれって、普通のゴーレムじゃないの?」
「ちょっと違うの。ゴーレムと言ったのが、失敗ね。あれって、私が作った自立型土人形なの」
「どうみても、ゴーレムだよ。土人形は、動かないよ」
キリ姉も少し落ち着いたようだ。仕方がないので、もう一度説明した。
「なるほど、ゴーレムと従魔契約をかわしたわけじゃなかったんだ」
「そうよ、私が作ったっていったよね」
「聞いたけど、普通のゴーレムだと思い込んでいたから」
「私も、興奮して、つい、ゴーレムって言ったもね。ゴメン」
「そうか、従魔契約をしないで、ゴーレムみたいに動けるのね」
「そ、そうよ。キリ姉、そのとおりよ」
「本当に、凄いね」
やっと、キリ姉に分かってもらえて、私は笑顔になった。心配そうにしていたパープルも一緒に喜んでくれている。
「キリ、このゴーレムっぽいの、どうするの?」
「これから、沢山作って、私達の代わりに働いてもうらうよ」
「ちゃんと動くの? 大丈夫?」
「心配ないよ。もし、おかしくなっても、工場に封印魔法をかけて、外に出られなくくしておくから」
「そう、それならいいわ」
こうして、自立型土人形のお披露目が無事? 終了した。
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