第21話 魔法学院での生活(4)

 暫くして、私は特殊な闇魔法として、「魂の複製」「魂の刻印」「空間圧縮魔法」「時間遅延魔法」「魔法の魔法陣化」を考えた。


 「キリ姉、やっと考えがまとまったから、魔導書を貸して」


 「はい、これよ」


と、キリ姉がアイテムボックスから魔導書を取り出して、私に渡してくれた。


 私は、魔導書を手に持ちながら、「魂の複製」「魂の刻印」「空間圧縮魔法」「時間遅延魔法」「魔法の魔法陣化」を1つずつ順番にイメージしていった。


 すると、魔導書が消えてなくなってしまった。


 実技演習の時間も、興味のあるものはなく、初級・中級の魔法を教師の手本を真似ながら実行するだけだ。特に新しい魔法もないので、退屈していた。でも、黒魔導士グレン先生の創作魔術はちょっと興味を持った。


 黒魔導士グレン先生によると、魔法陣については次のように考察できるらしい。ちょっと私なりにまとめた。


 『魔法陣は、【2つの同心円】と【円の中心の五芒星】と【円と円の間の文字・記号】に分かれている。ここで、2つの同心円は全体の形式を整えるためのもので、フレームのようなもので、魔法自体の機能・性能には影響を与えない。


 五芒星は、それぞれの頂点に火・水・風・土の属性の記号を付ける。それにより、魔法の属性が定まる。真上の頂点は、【空】つまり外界との接点で、ここからマナが形となって現れる。残りの頂点を左から、時計の逆順に1から4までの番号をつける。1が風、2が火、3が水、4が土となる。最後に真上の頂点【空】を5と考える。


 五芒星は、電気回路と見做すと2・3は直接5に接続するが、1・4は、2・3を経由しないと5に達しない。つまり、火・水の魔法はダイレクトに放出することができるが、風・土の魔法は、一旦火・水で蓄えられてから放出される。つまり、ワンテンポ遅れて放出されるということだ。


 また、五芒星を回路と見做せば、各頂点に五芒星を更に埋め込むことが可能である。つまり、五芒星の各頂点に円を描き、その中に五芒星を描くということだ。これにより、複雑な魔法陣を描くことができる。そして、同心円がフレームだと考えれば、円自体が不要となる。更にこの考えを進めると五芒星自体が不要となる。


 つまり、直接4つの属性の記号を小さな円の中に描き、それを一つの単位として、順番に接続させていけば、全体の回路のようなものができあがる。そして、それぞれの線に補助的な文字・記号で細かな制御を行うことができる。


 これで、魔法陣の分解・再合成が完成する。後は、どのように接続させていくのか、つまり、回路図が完成すればよい。』


 自作の魔法陣について、考え方の基礎ができたので、後は実際に作成し、動作させ、検証していけばよい。そして、一つの回路が完成すれば、それをパーツとして、新たな回路を作ることが容易になる。つまり、シンプルな魔法陣を沢山つくり、検証済みのものをデータベースとすれば、それを用いるとより高度な物が容易に作成できるようになる。


 そして、私の利点は、スキル鑑定が回路図に対して有効だということだ。これにより、魔法陣のデータベース化がスピードアップできる。つまり、実際に動作させなくても、検証ができるということだ。そして、特殊な魔導書によって、使える魔法を魔法陣にすることが出来る。


  今日は、私は、ちょっと変わった実験にチャレンジするつもりだ。


 魔法陣は、マナを流す回路だということは、ほぼ、間違いがない。でも、この回路は中学生レベルだ。つまり、流れるマナに対して、複雑な制御ができない。五芒星などの図形の線は、すべて、マナが流れていく、つまり、電気回路の銅線と同じだ。


 そこで、前世での私の道具、コンピュータのような機械を電流の代わりに、マナを使って構築してみようと思う。


 まず、半導体を作る必要がある。これが、できないのなら、私の夢は夢のままだ。


 半導体に必要な材料は、絶縁体だ。これは、光魔法で作れる。つまり、バリアを物体化すればいいだけだ。バリアを境にマナは遮断される。つまり、マナにとっての絶縁体となる。


 つぎに、これを半導体に変化させる。一定の条件の下で、マナが流れるようにするということだ。


 マナをよく流すものは、何だろうか?


 それは、オリハルコンやアダマンタイトになる。今回は、オリハルコンを使うことにする。


 オリハルコンを材料に、光魔法で、物質化したバリアをつくる。これが、マナを流したり、遮断したりできれば半導体の完成だ。この物質を半導体のシリコンにちなんで、マシリコンと名付ける。マシリコンの厚みが大きいと、マナを通すようになるまでに必要な外部の力が多く必要になる。そこで、少ない外部の力でマナを通しやすくなるように、厚みを薄くした。


 そとからの力はどのようにして実現したらいいのか。


 半導体であれば、電圧をかける。電圧は、電気が溜まったものと考えてもいい。そうすると、マナを貯めることができれば、電圧のような働きをさせることができる。


 光魔法で作ったマシリコンは、一方方向にしかマナを流さないことが分かった。


 「今日は、ここまでにしておこうっと。少し、見通しが出来た」


 「キリ、ワラッテル」


 「そうよ。嬉しいからね」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る