第20話 魔法学院での生活(3)

 「キリ姉、せっかくだから、アンティークを置いている商店を見て回ってもいい?」


 「構わないわよ。時間もあるし、ゆっくり、見て回りましょ」


 3人は、商店街を気の向くまま覗いていった。何軒か見て回っているとき、急にパープルが吠え出した。


 「ウゥー、ウゥー」


 「パープル、どうしたの?」


 「キリ、パープルは、どうしての?」


 「私にもよくわからないの。急に唸りだしたの」


と言いながら、店をよく見てみると、以前に立ち寄った商店だった。キリ姉と別れて、アンティークを探していた時にパープルと一緒に入って店だ。


 「思い出した。以前、キリ姉と別れてから、入った店よ」


 「その時、何かあったの?」


 「うーん、よく覚えていない。パープルが怖がっていたので、すぐに店を出ただけよ」


 「パープルって、結構強い魔獣だよ。それが、怖がっていたって?」


 「そう、そう。アンティークを店員に見せて貰っていたときよ」


 「なぜ怖がったのか。調べてみましょ。キリ、入るわよ」


 「はい」


 3人は、キリ姉を先頭にして、店に入っていった。


 「すみません」


 「はい。何かお探しですか?」


 「以前にも、来たことがあるのですが、覚えていますか?」


と、私は、店員に聞いてみた。


 「ええ、覚えていますよ。何か、用途不明な物を探しているとか、言われていましたね」


 「そうです。その時に案内にして貰った棚に、連れて行ってもらえますか?」


 「わかりました。こちらへどうぞ」


 私達3人は、店員の後について、古ぼけた商品が並ぶ棚の前まで、行った。


 「こちらです」


 「少し、見てもいいですか?」


 「はい、いいですよ。古いものが多くて、壊れやすいので、取り扱いには注意して下さい」


 「はい、わかりました」


と、キリ姉が答えてから、棚の前に行った。

 すると、パープルが急に私の後ろで、震えだした。


 「キリ姉、パープルが怯えてるよ」


 「キリ、スキル使える?」


とキリ姉が私の耳元で囁いた。


 「うん。やってみる」


 私は、古い商品が並べられている棚を、少し離れた場所からスキル鑑定で、調べ始めた。


 すると、棚の中に光るアイテムがあった。私は、キリ姉にそのアイテムを教えた。


 キリ姉は、そのアイテムに近づき、両手で持ち、眺めている。特に、何事も起こらないけど、相変わらず、パープルが震えている。


 私も、もう一度、スキル鑑定で感知してみる。でも、何も、表示されない。


 「キリ、光魔法を使って、解呪魔法をかけてみない」


と、キリ姉が小声で言ってきた。


 「はい、やってみます」


 「店員の注意をそらすから、その間にやってね」


と言いながら、キリ姉は、店員に声を掛けて、別の商品の説明を求めていた。


 店員が、こちらを見ていないことを確認してから、キリ姉の言うように、呪縛を解くイメージで、光魔法を古びたアイテムに掛けてみた。


 特に、何も変化がなかった。私は、キリ姉の近くへ行って、小声で、


 「何も変化がないよ」


と、伝えた。


 「そう。店員さん、私がさっき持っていたアイテムは、いくらするの?」


 「ああ、あれですか。古くて、飾りにもならないので、いくらでもいいですよ」


 「どれじゃ、金貨1枚でどうかしら?」


 「ええ、構いません」


 「それじゃ、頂くわ」


 キリ姉は、そのよくわからないアイテムを包んでもらってから、アイテムボックスに入れた。


 「キリ、他に見たいものはない?」


 「特にありません」


 「それじゃ、帰ろうか」


 「はい」


 3人は、寮に帰った。寮の部屋に入ると、


 「キリ姉、もう一度、先ほどのアイテムを見せて」


 「これね」


 キリ姉は、アイテムボックスから、古ぼけたアイテムを出し、包みから中身を取り出し、机の上に置いた。


 「もう一度、調べるね」


 私は、もう一度、スキル鑑定を実行してみた。すると、ぼんやりと、何か表示された。でも、何が表示されたか、よくわからない。


 「だめね。何か、わからないわ」


 「もう一度、解呪魔法をかけてみたらどうかしら?」


 「ひょっとしたら、かなり強い呪縛魔法が懸けられているのかも。やってみます」


 先ほどより、多くのマナを使って、解呪魔法をかけて見た。そして、その状態を暫く持続することにした。すると、古ぼけたアイテムから、黒い靄のようなものが出てきた。そして、それがアイテム全体を覆い、もう、直接はアイテムが見えないぐらいになった。しばらくすると、今度は、淡い青色の光が黒い靄の間から漏れてきた。そして、それが、大きくなり、黒い靄のようなものが消えていった。


 黒い靄のようなものが消え去ったのを確認してから、スキル鑑定を行った。すると、今度は表示された内容がはっきりと読み取ることができた。

 

 【魔導書

   等級:Ex

   種類:闇魔法 

   機能:想像した5つの魔法を扱えるようになる。

      ただし、5つの魔法を実現すると消去される。】


 私は、表示された内容をキリ姉に伝えた。

 キリ姉は、驚いて、飛び上がった。


 「なんと、闇魔法」


 「だから、パープルが怖がっていたのね」


 私は、怯えていたパープルの頭を撫でて、安心させてあげた。

 「キリ、どうするの?」


 「取り敢えず、キリ姉の王級のアイテムボックスに入れて貰える」


 「いいわよ」


 キリ姉は、私から魔導書を預かると、王級のアイテムボックスに入れた。


 「キリ姉、魔法学院の図書館で、闇魔法について、調べてみるわ」


 「そうね、すぐに対処しなくても大丈夫だから、しっかり調べて、決めようね」


 「はい、そうします」

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