第22話 商人キリ
ようやく、魔道具であるアイテムボックスを作る準備が完成した。
アイテムボックスは、革袋で作るより、土魔法で作った石箱を硬化で、薄く頑丈にした物の方が性能が良かった。
闇魔法の「空間圧縮魔法」と「時間遅延魔法」を「魔法の魔法陣化」でそれぞれを魔法陣にした。つぎに、石箱を土魔法で作成し、硬化してから、2つの魔法陣を刻印した。
出来上がった石箱に魔法陣を刻印し、魔力を流し込んで、自動的に魔法が発動し続けるようにする。最後に、刻印された魔法陣が簡単に傷つけられないように、薄い石の膜で覆う。更に、魔法陣が傷つかないように表面を光魔法でコーティングし、保護した。ラップをかけるような感じかな。
今回製作したアイテムボックスは、魔石を組み込んだだけの従来のアイテムボックスより、より多くの物を入れることができる。また、従来のアイテムボックスでは、普通に劣化するのだが、通常の10倍まで、時間を遅延させているので、1週間程度の旅行であれば、問題なく新鮮な物をいつでも食べることが出来る。今回は、商店で売ってもらう予定なので、空間圧縮に関しては、荷馬車1台分に留めることにした。
取り敢えず、見本として1個作り、サンライズ商店に持っていくことにした。
「すみません。店長はいますか?」
「これは、キリさん。今日は、どのような用件ですか?」
と、店員のロックが声を掛けてきた。パープルは男性が苦手なので、私の後ろに隠れて、尻尾を振っている。
「見本のアイテムボックスが出来たので、確認してもらおうと思って、来ました」
「えっ、もう出来たのですか? 打合せしてから、まだ、1日ですよ」
「以前から、作る準備をしていたので」
「そうですか。それでは、こちらへどうぞ」
と言われ、いつもの応接室に案内された。暫くすると、店長のギルバートがやってきた。
「お待たせしました。早速、見せて貰えますか」
と、部屋に入るなり、ギルバートは、待ちきれないように言った。
「はい、これです。今回は石箱で作っているので、頑丈です。機能としては、荷台1台分のアイテムを収納できます。また、1週間程度であれば、食べ物でも、ほとんど痛みません」
「それは、凄いですね。劣化しないアイテムボックスは貴重です」
「いえ、いえ。劣化はしますよ。痛みにくいだけです」
と、ちょっと訂正しておいた。後で、クレームが出ないようにしておかないと。
「はい。わかりました。それでは、1個金貨50枚では、どうでしょうか」
「金額の方は、ギルバートさんに一任します。よろしく、お願いいたします」
「1度に何個ぐらいだったら、引き取って貰えますか?」
「そうですね。最初は、20個でお願いいたします。その後は、売れ行きを見て決めるということでいいですか?」
「はい、それで結構です。取り敢えず、明日20個持ってきますね」
「そんなに簡単に作れるのですか? 無理しないでくださいね」
「はい、大丈夫です。私、無理しないので」
無事、商談も済み、気分良く帰路ついた。
せっかく、商店街に来たので、パープルと一緒に店を見て回ることにした。パープルに可愛い服も買ってあげたし、美味しい物も食べたいし。
「パープル、キリ姉には内緒だよ」
「ウン、ウン」
パープルに口止めして、服を見たり、甘いものを食べたりして、寮の部屋に帰ってきた。
私は、すぐにアイテムボックスの製作に取り掛かった。まず、石箱を20個つくった。これは、初級の土魔法なので、簡単に作れた。次に、それぞれの石箱に硬化魔法を掛ける。
これも、範囲魔法を使えば、時間がかからない。
続いて、魔法陣の刻印だ。これは、一つずつ慎重に行わないといけないので、時間が掛かった。
次に、魔力の流入だ。私は、総魔力量が半端ないので、まったく問題ない。
最後に、それぞれの箱をコーティングして完成だ。何とか、夕食までに、20個作ることが出来た。
念のためスキル鑑定で、出来上がったアイテムボックスの検査を行った。
すべて問題なく、予定の性能があることが確認できた。
「そうだ、ついでにパープルと私の分も作っておこうっと」
急いで追加の2個のアイテムボックスを作り、検査をした後、パープルに1個あげた。
「前のアイテムボックスの代わりに使ってね」
「ウン、ウン」
と、パープルは、尻尾を振りながら、私の頬を舐めてきた。私はパープルを抱きかかえて、頭を撫でてあげた。パープルは、喜んで、モフモフの尻尾を振っている。
アイテムボックスの販売も軌道に乗ってきた。ただ、1度買うとめったに買いなおしはないので、一定量が売れると、後はそんなに売れないと思う。
そこで、常時売れる物を取引することにした。そう、ポーションだ。これなら、消耗品なので、常に売れ続ける。でも、誰でも作ることが出来るので、私達は上級と特級の赤のポーションを売ることにした。これなら、誰でも作るという訳にはいかないから。
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