第9話 秘密の特訓

 第1階層、第2階層、第3階層と一気に進み、今回は、攻撃してきた魔物だけ相手にして、こちらからは、小物の魔物は避けていった。


 第4層の休憩用の小屋を素通りして、第5階層に潜った。


 ここで、帽子とローブと杖の黒魔導士の必需品をキリ姉に預け、アイテムボックスに保管してもらった。


 黒魔導士が戦士の練習をしているなんて、他のパーティーに知れらないように、注意した。


 この階層でワーウルフを狩って、戦士としての適性を確認することにした。


 スキル探索で、ワーウルフの群れを感知した。私は、目的地に向かったダッシュした。ワーウルフの群れに、一気に近づき先頭の1匹を剣で両断した。


 襲いかかってくる他のワーウルフを小さな盾で防ぎながら、どんどん狩っていった。


 周りをワーウルフに取り囲まれながらも、次々に襲ってくるワーウルフを倒すことに専念していた。


 「危ない! 後ろ!」


と、キリ姉の声と共に火球ファイア・ボールの弾ける音が頭の後ろで聞こえた。


 後ろから襲われていることに気が付かなかったようだ。戦闘をしながら、スキル探索を発動するのなかなか難しい。使うスキルが違うように感じた。基本的なことが欠けているようだ。


 剣を振りワーウルフを狩るたびに、剣速は上がっていき、消費される体力も減って、どんどんと効率よく狩ることが出来る様になった。


 「もう十分よ。戦士としても特に問題はないみたいね」


 「適性はあるみただけど。でも、ちょっとこのままではだめみたい」


 「どういうこと?」


 「うん。うまく言えないけど、剣術の基礎が出来ていないみたいなの」


 「そうね。やみくもに剣を振り回しても、一定以上のレベルには、難しいかもね」


 「どこかで、基本から習いたいけど、いい所はないかしら?」


 「冒険者ギルドで相談してみる」


 「はい。お願い」


 「それじゃ、すぐに戻りましょう」


 私達は、冒険者ギルドでシェリーに声を掛けた。


 「どこかで、剣士の基礎を教えてくれる所はないかしら」


 「そうね、依頼を出すこともできるけど、そんなに長時間でなければ、冒険者ギルドの練習場で教えて貰えるよ。もう一つは、剣士の養成所かな」


 「そうね。考えてみる」


 「でも、誰が必要なの?」


 「ちょっと知り合いに聞かれたの。誰かは、内緒よ。シェリーも、私に聞かれたことを内緒にしてね」


 「いいよ。キリの頼みだからね」


 「また、来るね。バイバイ」


 「バイバイ」


 私の素性を明かさずに教えて貰うことは難しいみたいだ。


 「他に何かいい手はないかな?」


と、キリ姉が頭を抱えた。


 「キリ姉。本ってないの? 図書館とか?」


 「図書館って何?」


 「本が沢山置いてあって、自由に読むことが出来る所よ」


 「そうね。神殿には多くの本がおいてあるよ。それと、王宮かな」


 「どちらも、無理かな」


 「あっ、ヤングリーブズのリチャードは、どう?」


 「でも、彼って、斧剣士でしょ」


 「似たようなものじゃない?今は基本だけなんだし、いいんじゃないかな」


 「そうかな?」


 「彼なら、遊びで済むよ」


 「そうね。分かったわ、キリ姉」


 「それじゃ、酒場にいくわよ」


 酒場では多くの冒険者が、食べたり、飲んだりと騒いでいた。


 酒場の奥の方に、ヤングリーブズの4人がいた。


 「こんばんは。覚えている?」


と、キリ姉がリチャードに声を掛けた。


 「もちろんだよ。こんな可愛い子を忘れるわけない。一緒に飲むかい」


 「ご一緒させて貰ってもいいかしら?」


 「「もちろん」」


と、カルロス、ローズが声を揃えた。リーナも小さく頷いていた。


 「よろしくね」


 「よろしく、お願いいたします」


 「妹は少し硬いね。普通でいいよ」


とリチャードに言われた。


 暫く、ダンジョンの様子を話し、色々と情報を得た。


 冒険者ギルドが調査したところ、ダンジョン自体が変動したらしい。地震みたいな地殻変動と同じみたいだけど、通常はないらしい。どこかのダンジョンが崩壊し、そこの魔力がここのダンジョンに雪崩れ込んだらしい。どこのダンジョンが崩壊したかの情報はまだないが、そんなに遠くのダンジョンではないみたいだ。時間がかかるが、やがて安定するだろうと冒険者ギルドは考えているようだ。


 安定したら、ダンジョン調査が行われるらしい。それまでは、深層まで潜るパーティーは、待機らしい。リチャードのパーティーも、暫くは待機するようだ。

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