第6話 マナポーション

 ヤングリーブズと別れた私たちは、今後の活動について、相談することにした。


 予定では、暫くは、ワーウルフを狩って、レベル上げをする予定だったが、ダンジョンが不安定な状態では、リスクが大きすぎる。他の方法で、レベル上げをせざるを得ない。


 何がいいのか、考えることになった。姉のキリとの違いを確認してみることになった。


 魔力量は、姉に負けないほど、十分にある。最近では、魔力切れを感じることがないほどだった。


 問題は、攻撃魔法の種類の少なさと、威力のなさだと思う。


 まず、火魔法から、レベル上げをすることにした。今は、初級レベルの単体攻撃の火球ファイア・ボールしか使えないので、範囲攻撃の火壁や火嵐が使えるように練習を始めた。火壁は、半径5m程度の小規模の範囲攻撃だが、火嵐は半径10mにも及ぶ広範囲の範囲攻撃になる。そのため、一度に放出魔力量は桁違いになる。火壁は、火球(ファイボール)の100倍の魔力を消費する。火嵐は、火壁の4倍の魔力を消費する。


 魔法操作は日々使うことによって、上達する。また、体内魔力を使い切り、休息することで総魔力量が増える。しかし、魔力量を使い切ると、元の状態まで回復するのに数日掛かることもあるので、むやみに行うことはできない。そこで、MP回復用の青のポーションを大量に購入して、利用することを考えた。でも、今の私には経済的なゆとりがないので、自分で作成できないか、試してみることにした。


 錬金術師なら簡単に作れるらしいので、レシピを教えて貰い、薬草収集から始めることにした。


 取り敢えずベースハーブとマナハーブが必要らしい。ベースハーブは、森の近くの日当たりのよいところに生息しているらしいので、早速採りに行くことにした。MP回復用の青のポーションを大量に作成したいので、ベースハーブが大量に必要になる。


 姉と一緒に森へ行き、持てるだけベースハーブを採集した。


 次に、マナハーブだが、これはダンジョンの中に生息しているので、もう一度ダンジョンンに潜ることにした。しかし、今回は、魔物の討伐が目的ではないので、潜るのは第3階層までにとどめることにした。


 姉と一緒にダンジョンに潜り、マナハーブを探した。冒険者ギルドで、見せて貰ったマナハーブを頭の中に描きながら、何処にあるかなぁと思っていると、生息している場所が感じることが出来た。


 どうも、探索スキルが身に付いたようだ。見つける度に収集していくと、探索スキルが上達して、明確に生息している場所が分かるようになった。まるで、頭の中に探索用のデカルト座標が出来上がり、座標とその場所での収穫見込み量が表示されているかのように感じることが出来た。


 こうなると、通常では収穫し難いマナハーブも、最短経路を解く問題の様に解答することが出来た。


 短時間で、十分なマナハーブを収穫して、姉と共に部屋に戻った。


 MP回復用の青のポーションを作るのには、通常、魔道具を使うか、上位の白魔導士が使う光魔法が必要になる。私たちは魔道具を持っていないので、光魔法が使えないか確認することにした。


 姉のキリは、光魔法の適性がないことはわかっていたので、私が挑戦することにした。


 マナを集めて、掌の上で光球をつくることに挑戦した。イメージは単純で、電球をイメージした。


 すると、マナは光球へと変化して、明るく輝いた。


 「凄い! 光魔法の属性を持っているのね」


 と姉のキリが叫んだ。


 「姉さん、他の人に知られたら困るわよ」


 「ごめんなさい。つい、興奮しちゃった」


 「まず、バケツに水を貯めてと」


 「次にベースハーブとマナハーブをすり潰して、バケツに入れていくね」


 「最後に、MP回復用の青のポーションをイメージしながら、魔力を注ぎながら混ぜていくね」


 すると、バケツの中の緑色のドロドロとした液体が光りながら、青色に変色を始めた。また、ドロドロしていた液体は、透明な青色の液体に変化し、すり潰した薬草の屑がバケツの底に溜まり始めた。


 浮水がすっかり透明になったところで、魔力を注ぐのを止めた。


 「できたかな?」


 私が、出来上がった青色の液体を見つめながら、これは何かなぁって考えていると、頭の中で「初級マナポーション」という表示が浮かんできた。私は鑑定のスキルを手に入れたようだ。


 「お姉さん。できたみたいよ」


 念のため、ポーション用の瓶に入れて、冒険者ギルドで鑑定してもらうことにした。


 冒険者ギルドの受付のシェリーに、


 「このポーションの鑑定をお願いしてもいいかしら」


 「いいですよ。一定のレベルに達していたら、引き取ることもできますよ。

 それでは、拝見しますね」


 シェリーは、鑑定用のトレーを持ってきて、預かったポーションをトレーの中に入れた。


 「大丈夫ですね。初級のマナポーションです。引き取ることもできますが、どうしますか?」


 「いいえ、結構です。お手数をおかけしました」


 「気にしないで、また、何かあったら言ってください」


 冒険者ギルドから帰ってきた私たちは、喜んで総魔力量の上昇に取り組んだ。


 姉のキリと私は、町から少し離れた草原で、火魔法で火壁を作る練習を始めた。


 一人が魔力を使い切ったら、マナポーションでもう一人が回復させる。


 これを交互に何度も繰り返した。


 すると、二人の総魔力量はグングンと上昇して、最初の総魔力量の10倍以上になった。


 まだ、マナポーションが残っているので、更に練習を続けた。


 姉のキリは、総魔力量100,000になったところで、ほどんど増えなくなってしまった。


 「私は、これが限界みたいね。でも、今の総魔力量なら、火壁の上位の魔法の火嵐を10回は使うことが出来るので十分ね。あなたは、まだまだ増えそうだから、もう暫く練習したらいいわ」


 「はい、もう少しやってみますね」


 バケツの中のマナポーションがなくなるまで、私は引き続き練習を繰り返した。


 最後には、総魔力量10,000,000までになった。総魔力量は、使い切ってしまうと、5割増しに増えていくようで、たった20回程度の練習で最初の総魔力量の1万倍までに上昇した。


 「あなたって人は、上限がないみたいね」


 と言って、姉のキリは驚いた。


 「お姉さん。他の人には、内緒にしてね。お願い」


 「わかっているわよ。それぐらい」


 「でも、すごいね。光魔法も使えるし、総魔力量の多さときたら、まるで英雄よ。

 それに、さっきのは鑑定でしょ。冒険者ギルドの魔道具と同じみたい」


 せっかくなので、水魔法と風魔法も、レベルアップすることにした。でも、もうマナポーションが無くなっているし、夜も更けているので、今日は部屋に帰ることにした。


 翌日に、また、バケツ一杯のマナポーションを作ってから、姉のキリと私は、水壁と水嵐、風壁と風嵐を練習して、すぐに、繰り出せるようにした。


 これで、あの不安定なダンジョンでも安心して潜れる。

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