第4話 初めてのダンジョン

 今日潜るのは初級ダンジョンで、目標は第5階層らしい。そこにはワーウルフがいるので、それを中心に狩っていくようだ。ワーウルフ単体ではそれほどの脅威ではないが、通常10匹以上の群れて行動しているので、集団に一気に襲われると危ないらしい。


 そこで、慣れるまでは、逸れているワーウルフを単体で、倒して、慣れていく予定だ。


 漸く初級ダンジョンに到着した。入り口では係員が冒険者IDの確認と手数料を取っている。


 私はランクEの冒険者IDと手数料の銀貨10枚を係に渡した。


 「ランクEか! 大丈夫か?」


 「はい、姉と一緒に入りますから、大丈夫です」


 と言いながら、姉を指さした。


 「そうか、Cランクと一緒なら、問題ないな。


 突発的な事もあるので、無理はしないように、いいか」


 「はい、わかりました」


 「よし、入っていいぞ」


 第1階層には、スライムが中心で、大した魔物もいないので、私達はすぐに第2階層に移動した。


 第2階層はゴブリンが少数居るが、それほど、危険な場所ではない。


 2人は、周りを探索しながら、第2階層を進んで行った。途中で、数匹のゴブリンに遭遇したが、さほどの困難もなく倒すことが出来た。ゴブリンの魔石を右耳を回収して、更に先に進んだ。


 第3階層に入ると、オークが3匹いきなり攻撃を仕掛けてきた。


 オークは、それほど強い魔物ではないが、HPが高く、倒すまでに時間がかかってしまう。そのため、倒しきるまでに、他の魔物に襲われるリスクがある。そこで、3匹のオークに対して、均等に攻撃するのではなく、特定の1匹に集中して、2人で攻撃することにした。


 特にHPの低い1匹を2人で集中的に火魔法で攻撃し、ほどなく倒すことが出来た。


 続いて、もう一匹を攻撃し始めたとき、8匹のゴブリンが右前方から現れた。


 仕方がないので、オーク2匹はキリ姉に任せて、私は8匹のゴブリンに対応することにした。ゴブリンは、HPがそれほど高くないので、一撃で、倒していける。私は、石礫で、先頭のゴブリンを倒し、火球ファイア・ボールをゴブリンの群れの真ん中に放ちながら、風カッターウィンド・カッターを連続で3回放った。


 すると、風カッターウィンド・カッターで、2匹のゴブリンを倒すことができ、火球ファイア・ボールのおかげで、残りのゴブリンの攻撃を遅らすことが出来た。余裕ができたので、もう一度火球ファイア・ボールをゴブリン達の中心に放った後、風カッターウィンド・カッターを連続で3回放った。これによって、2匹のゴブリンを倒すことが出来た。


 後のゴブリンは、3匹になった。水魔法で、ゴブリン達の足元を泥濘にして、動きを止めてから、風カッターウィンド・カッターを最後の1匹が倒れるまで、連続で放った。


 漸く、ゴブリンの群れを倒した私は、キリ姉の方を振り返った。流石にCランクの冒険者だけあって、2匹のオークを寄せ付けずに、倒しきるところだった。


 「キリ姉、大丈夫ですか」


 と声を掛けると、


 「大丈夫よ。あなたも終わったようね。それでは、後始末をしておきましょう」


 私たちは倒した魔物の魔石と証拠品を回収して、次の階層へと向かった。


 第4階層は、安息用の階層で、更に下の階層へ行くための休憩所が備わっていた。このダンジョンは、4の倍数の階層に安息用の階層が設置されており、休憩用の小屋があった。その小屋の中には、商業ギルドの係が、ポーションなどを売っており、商業ギルドの係を守るための冒険者が3人待機していた。


 「ちょっと休んで行く?」


 とキリ姉に聞かれたので、


 「はい」


 と答えて、ワクワクしながら小屋の中に入っていった。休憩用の小屋は初めてなので、興味深々だ。


 小屋の中には、商業ギルドの係や護衛用の冒険者でけでなく、私たちの様に休憩している冒険者のパーティーも居た。彼らは、Dランクの冒険者で、下の階層から戻ってきたところらしい。第6階層まで、潜ったが、怪我人が出たため、ここまで、引き返してきたらしい。


 彼らは、「ヤングリーブズ」という名前のパーティーで、先頭のタンク(斧剣士)・戦士(剣士)・ヒーラー(白魔導士)・後衛の魔法使い(黒魔導士)の4人のチームで、今回は、急な襲撃で後衛の魔法使いが怪我を負ったので、先の階層へのチャレンジを断念したらしい。


 私たちが魔法使いの姉妹で、第5層のワーウルフをターゲットにしていることを伝えると、リーダーのリチャード(タンク)が暇なので、一緒に行かないかと誘ってきた。


 私が初めてのダンジョンなので、キリ姉も気を使ったのだろう、いつもはソロでダンジョンに潜っているのに、


 「いいですね。妹も初めてのダンジョンなので、勉強になります」


 とすぐに承諾した。


 「あなたもいいわね?」


 「はい、キリ姉」


 戦士のカルロスは黒魔導士のリーナが心配らしく、小屋で待っていることになった。


 先頭のリチャード(斧剣士)、続いて私(黒魔導士)、続いてヒーラーのローズ(白魔導士)、最後にキリ姉(黒魔導士)という配置で、第5階層に潜った。


 私は、周囲の魔物を探りながら、リチャードの後に続いた。暫くすると、3匹のワーウルフがこちらを窺っているの感じた。


 「リチャード、3匹のワーウルフが居ますよ」


と、私が言うと、


 「3匹程度、なんともないよ」


と言いながら、切り込んでいった。


 私の後ろのローズは、すぐさまリチャードに強化魔法をかけた。


 キリ姉は、他の魔物が接近したときに備えて、火球ファイア・ボールを飛ばす準備をしている。


 「ドリャー」


 という掛け声とともに、先頭のワーウルフに切りかかり、斧で、胴体を真っ二つにした。

 続いて、もう一匹のワーウルフも頭を斧で割られた。


 残りのワーウルフに私は、風カッターウィンド・カッターを飛ばした。傷をつけることは出来たが、倒しきることは出来なかった。そこにキリ姉の火球ファイア・ボールが破裂し、ワーウルフは、息絶えた。


 「よし、倒せたな。よく見つけたね。感心! 感心!」


とリチャードは、私の頭を撫でた。なんだか、バカにされたように感じた私は、嫌な気分になった。


 気を取り直して、周りの様子を探った。特に魔物の気配はなかった。


 すると、キリ姉が、


 「気を付けて、左前方の地面から魔物の気配がするわ」


と大声をあげた。


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