第3話 角ウサギ狩り
早速、冒険者ギルドで登録をすることになった。私には転生前の名前もあるが、この世界での名前はない。それに、路地で倒れていた人の素性も、名前も分からない。
キリ姉が、冒険者ギルドの受付のシェリーに声を掛けた。
「シェリー、冒険者登録をお願いしたいんだけど、今いいかしら」
「はい、大丈夫です。キリさん、こちらの用紙に記入をお願いします」
といって、慣れて手つきで、用紙とペンをキリ姉に渡した。
私は、キリ姉に説明してもらいながら、用紙を埋めていった。
『名前:キリ
ジョブ:魔法使い』
「はい、これでお願いします」
「あれ、同じ名前ですね」
「そうよ。私の妹なの。キリ2号ね。よろしく」
「姉同様、よろしくお願いします」
初めての登録なので、一番下のGランクからのスタートになった。キリ姉は、Cランクの冒険者で、受付のシェリーとは顔馴染みのようだ。登録料もキリ姉が立て替えてくれた。無事登録が終わり、冒険者IDを受け取った。
「早速、資金稼ぎね。生活費と登録料を稼がなくちゃね」
とキリ姉に言われ、早速魔物を退治することにした。でも、まだ、魔物を狩ったことが無い私の為に、魔法の練習をすることになった。
町はずれの草原に来ると、叢の中にスライムや角ウサギが居た。気配を感じることが出来たので、その方向に風カッターを飛ばした。
スライムの群れに飛んで行った風カッターは、3匹のスライムを切断した。倒したスライムからは、小さな魔石が飛び出した。姉のキリは、それらを丁寧に拾い集めた。
「倒した魔物に応じた魔石や牙などを冒険者ギルドに持っていかないと、倒したことにならないのよ。だから、倒すだけでなく、その後もしっかり処理してね」
「はい、わかった」
次に、角ウサギを狙うことにしたが、素早く動くので、なかなか狙うことが出来ない。
「角ウサギを狙うときは、相手の動きの先を予測して、狙う必要があるよ。ちょっと、やってみるね」
と言いながら、角ウサギの走っていく前方2mぐらいの位置に風カッターを飛ばした。すると、角ウサギの首がポトリと落ちた。
「次はあなたの番よ」
私も、姉の動きを真似て、角ウサギの少し前を狙って風カッターを放った。
「えぃ」
風カッターは、角ウサギのしっぽを掠めただけで、倒すことが出来なかった。
今度は、先ほどよりも、もっと前を狙って風カッターを放った。
「えぃ」
すると、今度は角ウサギの胴体に当たり、倒すことが出来た。
「上手よ。その調子で、もっと倒して」
「はい、姉さん」
2時間ほど、風カッターを放って、角ウサギを7匹倒すことが出来た。そして、しっかりと角ウサギの角と魔石を拾い集めて、冒険者ギルドに提出する準備も終えた。
「今日は、初日だから、これぐらいにして、戻りましょう」
「はい」
町に戻り、冒険者ギルドに倒した魔物を引き取ってもらった。スライムの魔石は1個が銀貨1枚に、角ウサギの角と魔石は、銀貨10枚になった。合計で、銀貨73枚で、すべて冒険者IDに貯金した。
宿屋に1日泊まる料金が、夕食付きで1人銀貨20枚なので、まだまだ、姉に負担して貰った費用までには達していない。明日以降頑張ることにして、今日はしっかりと食べて寝ることにした。
「さあ、今日も行くわよ」
「はい、お姉さん」
昨日と同じ草原に着くと早速狩り始めた。スライムを狩っても仕方がないので、今日は角ウサギに集中した。姉も一緒に倒していく。あっという間に半径100m以内の角ウサギを狩り切ってしまった。
今日は、角ウサギ152匹になった。私は、23匹に留まったので、少しがっかりしていると、
「よくやったね。2日目で、これだけの数の角ウサギを倒すなんて、とても優秀よ」
「本当ですか。お姉さん」
「本当よ。自信を持っていいわよ」
「はい」
嬉しいやら恥ずかしいやらで、少し顔を赤らめてしまった。身体に合わせて、心も若返ったようだ。
町に戻り、冒険者ギルドに倒した魔物を引き取ってもらった。倒した魔物数が規定に達したらしく、私はFランクに昇格した。
1週間ほど、同じ場所で狩りを繰り返し、ランクもEになった。
「そろそろ、別の魔物を倒しに行くわよ」
「えっ。大丈夫かな」
「大丈夫! 大丈夫! でも、今の装備では、少し拙いかな」
「そうですね。でも、どうしたらいい?」
「鍛冶屋に行って、装備を買いましょう」
「まだ、私には十分お金が溜まっていないよ」
「いいよ。妹なんだから、姉からのプレゼント。気にしないで」
「わかりました。ありがとう、姉さん」
2人で鍛冶屋に行き、装備を揃えた。まだまだ、駆け出しなので、装備も簡易なものにした。とりあえず、魔法の帽子と杖とローブとブーツを買った。
「これで良し。今日はダンジョンに行くわよ。
少し危ないので、絶対私から離れないでね。いいわね」
「はい、くっついていきます」
と言いながら、早速姉に抱きついた。
「こらぁ。これじゃ、戦えないよ」
と言いながら、キリ姉は笑った。
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