第2話 マナとは?
暫くは、助けて貰った冒険者の女性と行動を共にし、異世界のことを色々と教えて貰った。
姉のキリは、冒険者として生計を立てていた。15才にも満たない若い女性だった。まだまだ、駆け出しの魔法使いだけど、火魔法が得意で、ソロで魔物を狩っていた。
冒険者キリには、夢があった。それは、Sランクの冒険者になって、勇者と共に魔王を倒すことだった。しかし、特別な加護もないキリには、到底果たせない夢だった。勇者になんて、相手にされないだろう。
最初に、キリに魔法の使い方を教えて貰った。
魔法を使ったことのない私は、まず、マナについて教えて貰った。マナは、魔力と同じだが、キリは、よくマナという言葉を使う。
魔法を使うには、魔法の原動力というべきマナを扱えなければならない。マナは自分自身の体内にも存在するし、自分を取り巻く外界にもある。そして、魔物も多くのマナを持っている。
妖精は外界のマナを自分自身のマナの様に自由に扱うことができるため、大きな魔法を使うことができる。しかし、普通の人間は自分自身の中に取り込んだマナだけを自由に扱うことができる。従って、自分の体内に取り込めるマナの量が、扱える魔法に大きな影響を与える。
そこで、まず、マナに慣れるために、自分の周りのマナを感じることから始めた。次に、自分の周りのマナを体内に吸収する。最後に、体中にマナを巡らせ、手の平からマナを放出する。
はじめは、微小なマナしか扱うことが出来なかったが、徐々に扱うことが出来るマナの量を増やすことができた。マナの扱いに慣れてきたので、魔法を教えてもらうことにした。
「まず、マナを感じてね」
と言いながら、魔法使いのキリは右の掌の上にマナを集め始めた。すると、掌の上で少し輝くものが現れた。それは、豆球の明かりのようにぼんやりしたものだったが、次第に、はっきりとした光の球になった。
「これが、マナよ。よく見て、マナをイメージしてね」
「はい」
キリの掌の光の球を見つめていると、マナについてのイメージが出来てきた。それと共に、自分の身体の中に同じような感じの物があるように感じてきた。
「あなたにも、マナがあるのよ。それを感じて」
「はい、なんとなくわかります」
「それでは、そのマナを自分の掌の上に集めて」
「やってみます」
なんとか、掌の上に小さな光球を作ることができた。
「その調子。出来ているわ」
キリの声が聞こえてきたと思ったら、光の球は消えてしまった。それと、激しい疲れを感じた。
「もうだめ。疲れたわ」
体中のマナを循環させ、掌にマナを集める。たったこれだけのことで、全神経を集中しないといけなかった。
「少し休んで。マナを吸収して。私達の周りにはマナが沢山あるから、それを身体に取り込んで」
勇者として召喚された私には、特殊な能力が備わっていたようだった。まず、一度に吸収できるマナの量が非常に大きく、また、吸収できるマナの総量に限界を感じなかった。この時は、まだ、他の能力については分からなかった。キリの言われたように、空気中から、マナを吸収するイメージを描いた。すると、疲れ切っていた身体から、疲れが薄れていくようだった。
「キリ姉さん、マナを吸収できている」
「その調子よ。しっかりと吸収してね。さっきのは、マナ切れだったようね。身体の中のマナが少なくなると動けなくなるよ」
「はい、気を付けます」
「それじゃ、次に行くよ。今度は、魔法を起動するよ」
「はい、頑張ります」
最初の魔法は、火魔法を使って、
体中のマナを循環させ、掌にマナを集める。次に、蝋燭の炎をイメージして、マナを小さな
安定して
すぐには飛ばすことが出来ななったが、これも、繰り返していくうちにイメージを頭の中で描こうとしなくても、自然に
まるで、九九を覚えたての時は、2の段だとか、7の段だとか意識していたのが、3×7=21というように、無意識に結果を答えることができるのと似ていた。
魔法も、繰り返して実行することにより、無意識で行うことができるのだと実感した。
「申し訳ないけど、私には火魔法・水魔法・風魔法の3属性しか扱えないの。だから、次の風魔法で、教える事は終わりよ」
魔法使いキリは、火魔法・水魔法・風魔法の3属性の魔法師か扱えないというが、後で知ったことだけど、普通の魔法使いは1つの属性に特化しているだけで、3つの属性を持っているのは稀みたいだ。
若そうに見えるけれど、キリは相当優秀な魔法使いのようだ。
風魔法で、風カッターというかまいたちのような魔法を自由に扱うことが出来る様になった。
これで、約1週間もキリにお世話になった。そろそろ、自立しないといけないと私は思い始めた。
「キリ、私も何か仕事を見つけて、自立したいと思います。何か、私にできることがあったら、教えてください」
と私は、思いっ切ってキリに話した。
「そうね。私と一緒にパーティを組むのはどうかしら?」
と、申し分のない提案をしてもらえた。
「はい。よろしくお願いします」
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