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『お久しぶりです、師匠』


 ……!


 いきなりVHFのアナログ無線に飛び込んできた、その舌っ足らずな萌えボイスは……


「エイラ!」


 そう。エイラは様々な騒音が轟くコクピット内でも聞き取りやすいように、あえて甲高いアニメ声をしているのだ。


『ええ。敵にやられたフリをして、まんまと逆に侵入してやりましたよ。「攻撃の瞬間が最も脆弱」という師匠の教えどおりにね』


「……」


 確かに、かつて俺は「彼女」にそう教えた。攻撃する前には必ず後方確認チェック・シックスするものだ、攻撃の瞬間が最も脆弱なのだから、と……


 だが、これは本当にエイラなのか? いや、エイラだとしても、敵に寝返っている可能性も否定できない。


『さすが師匠、用心深いですね。だけど、これで信用してもらえるんじゃないですか?』


 その声が届いた、次の瞬間。


 IFF信号を受信。味方フレンドリー……!?


 エイラならIFFの暗号化アルゴリズムはもちろん知っている。だからと言って、今の状況ではそれが味方である保証にはならない。


 しかし。


 俺の目の前で、右側の敵4機編隊がいきなり散開、急旋回して左側の4機編隊に襲いかかった。みるみる敵機が撃墜されていく。


 あっという間だった。気づけば俺の機体の後方で敵機が左右に2機ずつ配置され、文字通りの指先形状フィンガーチップ編隊を組んでいる。4機全てが味方信号フレンドリー・スクオークを発していた。


『エイラ01小隊フライト4機、これより師匠の指揮下に入ります。基地に連れてってください。ほんとはもっとたくさんの機体を分捕ってきたかったんですけど、綿密なデータリンクを張れるのが小隊メンバーだけだったんで……4機だけでご勘弁を』

 

「エイラ……お前ってヤツは……」


 それ以上、何も言えなかった。エイラは俺が思っていたより俺の弟子だったらしい。


『ほら、昔からよく言うじゃないですか。「敵を欺くにはまず馬を射よ」って……あ、ちょっと待ってください。通信を傍受しました。どうやらアタシらの反乱がバレたみたいです。新たに2個小隊がスクランブルしてきました』

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