番号103
これで大体の情報のすりあわせは完了したと言っても良いだろう。
となると、次はこれからどうすべきか? になるはず……
「で、これまでの調査で遺言状は発見できましたか? それっぽいものでも良いです」
あ、先にこの確認があるか。
僕はトマさんと顔を合わせて、今まで巡ったトマソンを思い出してゆく。
思い出す限りは、遺言状のようなものは無かったように思うけど、そういうつもりで巡っていたわけではないからなぁ。歩道橋が切れてしまったようなトマソンにあったら、もうどうしようもない。
その辺りを佐久間さんに説明すると、
「それは遺言状は置けませんよ。そういう意味では、公園にある空中階段のトマソンは隠しやすいですね。だから鶴城さん……トマさんも熱心に探してきたのでしょうし」
「ああ、そうか。遺言状を探すという理由があれば、トマさんが階段を登った理由もわかります」
色々なことが紐解けていく感じだ。
僕がそう思って感心していると、佐久間さんが続ける。
「――とにかく、まだ発見できてないという前提で動きましょう。怪しいトマソンには改めて私が手を打ちます」
「再調査ですか?」
「ええ。駅や歩道橋、それに民家の上に覆い被さってくるトマソンは必要ないでしょう。残りを再調査すれば良いだけですから、それほど手間はかかりません」
それは……そうかも。
ほとんどは先輩達の調べた――ああ、途中でやめてるんだったっけ。
ある程度の納得と共に僕が頷いていると、佐久間さんはさらに続けてきた。
それも僕の意表を突きながら。
「それでお二人には引き続きトマソンの調査をお願いしたいんです」
「え? それは……」
無茶な話に思える、もう後は佐久間さんに任せても良いと思うんだけど……
「あたしは続けるわよ」
「トマさん、続けたい理由があることがわかったけど、わかったからこそ慌てなくても――」
「実は慌ててほしいんです。千馬さんからの突き上げが厳しくてですね。このままだと普通に相続する形になりそうなんです。十善さんの遺志もありますしそれは避けたいんですよ」
それを言われるとなぁ。
「トマソンについては、今でも専門家は鶴城さんだと考えています。そして貴方には土地勘がある。これはなかなかに良いコンビだと思うんですよ」
「あたしもそう思う!」
と、何故か二人がかりで説得されてしまった。
何だかおかしな状態になってる。
「それに……“トマさん”の記憶を回復させるにも、続けた方が良いと思います」
そして、この佐久間さんの言葉がとどめになってしまった。
僕は、首を縦に振るしかなかったのである。
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