番号101

「うん……これは、確かに胸がざわめくね。もっと側に寄れたら――」

「でもトマさん。こうやって離れて見ているからこそかも知れないよ」


 壁にポツリとあいたドア。

 そして、そこからぶら下がる金属製の階段。


 階段は壁沿いに降りてきているが。地上までは届いていなくて、これもまた空中階段の一種であることは間違いないだろう。

 降りてくる階段には……頑張ればなんとか手が届くのかもしれない。


 ただ確実なことは、あまりにも見事なトマソン振りであるということだ。

 で、あるからこそ触れるのではなくて鑑賞することが本当なのかもしれない。


 実際、トマさんの反応も駅や、ちょん切れた歩道橋を見たときと同じか、それ以上の興奮があるように見えた。

 胸元のウサギも跳ねている。


 ただ現状では、ただ見上げていれば良い、というわけにはいかない。

 それにトマさんの記憶の回復もある。何とかもっとトマソンに近づかなくてはいけない。


「ジャンプしてなんとか届く?」

「いや、トマさん。これはビルの方から回ろう。わざわざ危険なやり方でやらなくてもいい」


 ドアから階段に。そして順番に降りていけば、最終的には同じ事になるはずだ。

 一度、空中階段から落ちているトマさんだけに、ここはしっかりと止めておこう。


 ただ、それには大きな問題があった。

 僕はそれを伝えると同時に善後策を打ち出す。


「ちょっと時間が早すぎた。昼休みとか出入りする人間が増えたときにビルの入り口から回ろう。それに関係者はきっとお昼に出るだろうし、ますますうってつけだ」


 恐らくこのビルは雑居ビルだ。

 この時間帯では関係者だけがうろうろしているだけだろう。そんな中、恐らく立ち入り禁止になっているドアに近付くのは見つかるとややこしくなりそうだ。


「それはこっそりとさぁ」

「ダメだよ。安全第一。ここは時間を見計らってもう一度来てみよう。今度は大体の時間もわかるんだし」


 僕の重ねての制止で、ようやくトマさんも収めてくれたようだ。

 最後に、階段裏に何か無いかとそれだけ確認して、その場を離れた。


 やっぱりドアを確認しないとダメらしい。


・この場所がトマソン巡りの二カ所目なら……。番号93へ


・階段が重なっているトマソンへ。番号97へ


・地下道のトムソンへ。番号67へ


・原爆型トマソンへ。番号104へ

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