番号97

 二つ重なった階段のトマソンはかなり北にあった。

 そして市境(?)の側だった。その市境に沿って流れている川の堤防というか、そういう感じで人工的に盛り上がっている部分。


 それに登るために階段が設置されていたらしい。

 いや過去形で言うのはおかしいな。その急な階段の上に、金属製の階段があるのだから。


「なんて言うか……あまり大きくないね」

「それ僕も思った」


 駕籠市の北部がだんだんと山になっていることは、蔦葛さんの隠居所に行ったことで体感できている。それはこのトマソンのある場所も同じ事で、トマソン自体は大きくないというか「狭い」と言う感じだ。


 ただそれだけに、まず人目に付かない。

 遺言状を隠すには最適という可能性もある。


 僕は佐久間さんに言われたとおり、金属製の階段を下から覗いてみる。

 階段自体は新しく設置されたものらしく、錆も見た限りではない。光沢すらあった。やっぱり新しいトマソンではあるみたいだ。


 ただ……


「見つかった?」


 元からあった石の階段を中心に探索していたトマさんが声を上げる。

 彼女は石の階段と金属製の階段の境目に、何かねじ込まれていないか確認していたのだが、


「そっちは?」


 と尋ねると、首を横に振る。

 僕もそれに倣って首を横に振った。


 どうやら遺言状に関してはからぶってしまったようだ。

 となると、あとはトマさんの記憶についてだ。何かのきっかけになってくれていれば――


「う~ん、そっちもあんまり。そもそもあたし、どのくらいの大きさかもわかって無かったんだし」

「それもそうか」


 初見の可能性が高いのでは、記憶を蘇らせるきっかけにはならないだろう。


「それにこれトマソンなのかな?」

「そこから疑問を持たれちゃうとな」


 ここは潔く諦めるしかないか。


・この場所がトマソン巡りの二カ所目なら……。番号93へ


・地下道のトマソンへと向かう。番号67へ


・空中階段付き扉のトマソンへ向かう。番号101へ


・原爆型トマソンへ向かう。番号104へ

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る