番号85

 英賀先輩のデータはトマソンの画像。それに住所が網羅されていたけど、それを実際の地図に当てはめて、それぞれの位置関係がわかるまでには記されてはいなかった。


 もちろん、それを不親切だとは思わない。

 何しろ急場のことだったしな。昨晩も僕達はモニター上のデータとスマホの地図を使って、大体のところを確認しようとして……僕はその辺りで寝落ちした。


 やる気だけで満足して眠ってしまったような、どこか試験勉強のような。

 いや、僕にやる気があったのかと言われると……


 ただ、僕のスマホには中途半端だけど、トマソンの位置にピンを刺しているマップが残されている。


「あ、そこで終わってるんだ。あたしもそれ以上覚えてないから、ほとんど同時に眠っちゃったみたい」


 僕のスマホを覗き込むながら、トマさんが横に座った。

 ますますドキドキしてしまう。


「あたしね。何だか今が楽しいの。何でだろう? 君と一緒だからかな? これで純粋にトマソンを巡れるって……多分そんな感じ」


 胸元のウサギをイジリながらトマさんは呟いた。

 それは間違いなく、不穏当な発言だったのだろう。


 それに現状認識の甘さもある。


 けれどもそれだけに。

 いや、それだからこそ僕はトマさんにますますドキドキしてしまった。


 何か……トマさんの中で優先順位が入れ替わったような。

 そんな気がする。


 そのあとに今はすでにお昼前だったり先輩達からの連絡が無いことにも気付いたけど、それ以上はどうしようもないこともあって、とにかくトマさんと新しいトマソンを巡る。


 それが僕の最優先になったようだ。


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