番号82

「今まで確認されていないトマソンであるなら、可能性は高いのかも。だってそれは駕籠屋さんだけが知ってるってことですよね?」


 駕籠屋さんがどういった仕事をしてきた人なのかはよくわからないけど、駕籠市のことを誰よりもよく知っているとすれば、そうなるんじゃないだろうか?


「ええ。それに鶴城さんとの間でも話題にしやすいですし。十善さんから積極的に紹介したんじゃないかと」


 僕は思わず、隣のトマさんの様子を窺ってしまった。

 トマさんは改めて原爆型トマソンをジッと見つめている。


 だけど、あまり引っかかるものがないのか、その表情は晴れない。

 ただ記憶喪失なわけだし……


 そんなトマさんの表情を見て気を遣ったわけでは無いんだろうけど、佐久間さんはこう続けた。


「ただこのトマソンの場合、遺言状を隠す場所が無いように思えるんです」

「あ……」


 それは確かにそうだ。

 言ってしまえばただの壁だもんな。


「私共も報告を受けただけで、実際に現地に赴く時間がありませんでした。もしかしたら、何か隠せそうな場所があるのかもしれません」

「いいよ。どっちにしても全部回るつもりだったし」


 トマさんが、半ば投げやりに佐久間さんに答えた。

 けれど確かに、わざわざ候補から外す必要も無いだろう。他のトマソンとそれほど離れてはいないようだし。


 僕もトマさんに続いて頷いて見せた。


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