番号82
「今まで確認されていないトマソンであるなら、可能性は高いのかも。だってそれは駕籠屋さんだけが知ってるってことですよね?」
駕籠屋さんがどういった仕事をしてきた人なのかはよくわからないけど、駕籠市のことを誰よりもよく知っているとすれば、そうなるんじゃないだろうか?
「ええ。それに鶴城さんとの間でも話題にしやすいですし。十善さんから積極的に紹介したんじゃないかと」
僕は思わず、隣のトマさんの様子を窺ってしまった。
トマさんは改めて原爆型トマソンをジッと見つめている。
だけど、あまり引っかかるものがないのか、その表情は晴れない。
ただ記憶喪失なわけだし……
そんなトマさんの表情を見て気を遣ったわけでは無いんだろうけど、佐久間さんはこう続けた。
「ただこのトマソンの場合、遺言状を隠す場所が無いように思えるんです」
「あ……」
それは確かにそうだ。
言ってしまえばただの壁だもんな。
「私共も報告を受けただけで、実際に現地に赴く時間がありませんでした。もしかしたら、何か隠せそうな場所があるのかもしれません」
「いいよ。どっちにしても全部回るつもりだったし」
トマさんが、半ば投げやりに佐久間さんに答えた。
けれど確かに、わざわざ候補から外す必要も無いだろう。他のトマソンとそれほど離れてはいないようだし。
僕もトマさんに続いて頷いて見せた。
・番号79へ
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます