番号78

 トマさんの無防備な様子でドギマギしたことを誤魔化すために、スマホに目を落としたわけだけど、それだけでスマホは色々な情報を与えてくれる。


 最大の情報は今の時刻だ。

 まさかこんな時間になっていたとは。すでに朝ではなく昼前というのが正しいのだろう。午前十一時近い。


 そして先輩達から連絡が無いことも判明した。


「どうしたの?」

「いや……先輩達から連絡が無いなって」


 トマさんがそう尋ねながら僕の横に座った。いや他に座る場所は無いんだけどね。

 僕はドギマギしながら、先輩達からの連絡がない理由を考えることで気を紛らわせた。


 ……ええと、襲撃を受けて、そのまま捕まったりしてたりするのだろうか?

 いや、蔦葛さんもいるんだし、さすがにそれはないと信じたいところ。


 それに卜部先輩も腕が立ちそうだしな。

 いや、そもそも襲撃を受けたことがおかしいわけで……


「こっちから掛けてみるのは?」

「あ、ああ、そうだね……」


 やはりここは部長に掛けるべきなんだろうな。

 僕はすぐに部長のスマホに連絡してみたけど――出ないな。


 それから、メールとかその他の連絡手段を確認してもやっぱり何も無い。


「こっちの電池切れを考えてくれてるとか……」

「それは……あるかも」


 優先順位がおかしい気もするけど、変に気を回す可能性は否定できない。

 第一、先輩達は僕達が何処にいるかも知らないわけだし。いや、それを言うなら僕達も同じ事か。


 先輩達が隠居所にずっといるのかはわからないんだし。


「やっぱり、こうなったらトマソン巡りするしか無いよ」


 そうやって迷っていると、トマさんがそんな事を言い出した。


「え?」

「だってさ。お互いに会おうと思ったら、それはもう、USBの中に入っているトマソンが一番の目安になるでしょ?」


 それは……確かにそうなるな。

 トマソンのデータはもちろん英賀先輩も持っているわけで、それを僕らも持っている事も知っている。


 何だか説得力があるけど、まず先にあるのは「トマソン巡り」をしたいという、トマさんの執着なんだよな。


 それに上手い具合に状況がハマったわけで……


 でも他にやることもやるべきことも思いつかない。

 僕達はトマソン巡りの計画を立てることにした。


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