番号69

(遺言状だって?)


 僕は逃げながらも、千馬の発言に戸惑っていた。

 やっぱり遺言状がトマソンに隠されているという話は本当なのか?


 じゃあ佐久間さんの狙いは……?


 そんな事を考えながら逃げて行くと、


「あ! ここが原爆型トマソンなのね」


 部長が声を上げた。

 意識を向けると、白い壁に貼り付いたような木造平屋の家の写真。

 いや写真ではないのだろう。でも確かに家があった証拠が壁に残されていた。


「原爆型トマソンのことは本当……」


 それを見たトマさんが、そう独りごちた。

 英賀先輩の言葉が証明されて、ますます佐久間さんの思惑がわからなくなる。


 だけど、それをゆっくりと考えている時間は無い。


「前からも来た」


 という、卜部先輩の言葉通り、前からも男たちが現れたのだ。

 完全に挟み撃ちにされてしまった。


 とにかくこうなっては、木造の家があった場所に入るしかない。今は空き地になっていて更地の状態だ。他に行く場所は……完全に囲まれてるな。


 これは卜部先輩の言うとおり「マズい」状態だ。


「ははぁ、そこに遺言状があるんだな」


 そして、僕達を追ってきていた千馬がそんな事を言いながら近付いてくる。

 これはマジで遺言状を僕達が探してるって知ってるな。


 だけど、僕達だって遺言状がここにあるかどうかはわからないんだ。このトマソンだって、佐久間さんの言ってたことが全部本当だったとしても候補地でしかない。

 でもそれを訴えたところで、それを聞き入れてくれるとは――


「遺言状があるかなんてわかんないわよ!」


 それでも部長は叫んだ。

 英賀先輩はドローンを飛ばし、卜部先輩は製図用のキャリーケースから木の棒を取り出している。


 え? 戦うのか?


 いや確かにそういう事になりそうだけど――


「そこにこだわってるんだから、バレバレなんだよ! ははぁ、そこにあった家の床下か! そこに埋めてあるんだな!」


 千馬は千馬で勝手に盛り上がってる。

 もう何を言っても聞かないだろう。


「……お爺さまがいるんだから、無茶は出来ないはずよ。私達が引きつけておくからその間に逃げて」


 部長が小さな声で、そう指示をくれたけど……どうやって逃げれば良いんだ!?


・番号105へ

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