番号67

 地下道のトマソンは市の西側にあった。

 ほかのトマソンとは結構な距離があったし、都合の良い交通機関も見当たらない。そこで僕達はタクシーを使うことにした。昨晩、佐久間さんに貰った軍資金のおかげで問題は無い。


 そのトマソンのある地下道は、佐久間さんの指摘通りに隣の市にまたがる操車場の地下を通っているらしく、思ったよりも長い。

 つけっぱなしの蛍光灯がチカチカと瞬いていた。


 あまり整備はされていないみたいだ。

 そもそも駕籠市が整備を受け持っているのだろうか?


 ただ、それだけにまったく意味が分からない、あのただ通路の一部がへこんでいるだけのトマソンが発生する環境だけは整っていると言えるだろう。


 それでも利用者はそこそこいるらしく、数人の利用者とすれ違っている。

 地下通路の需要だけは間違いないらしい。


「で、これだね」

「うん。確かにこれはトマソンだわ」


 辿り着いたトマソンを見下ろしながら、トマさんがお墨付きを与える。

 よくよく見てみれば清掃も行き届いているようで、大事されている感じもある。蛍光灯については“たまたま”だったのだろう。


 そして問題のトマソン、具体的には何故か下がってしまった通路部分に足を踏み入れてみた。


 うん……普通の通路だね。間違いなく。

 その時、他の利用者が通りかかり、僕達を訝しげに見ながら通り過ぎていった。


 そうだよね。わざわざ上り下りをする通路を使う必要ないもんな。

 どう考えても不審者は僕達だ。


「手早く片付けよう。例えば……どこかがめくれそうになってるとか」

「そうね。隠すとなったら他に思いつけないし。床をお願い。あたしは壁をたたながら進んでみる」


 トマさんの具体的な指示で僕達はトマソンを探索していく。

 時々、通行する人が通りかかるときには出来るだけ大人しく。


 けれど――


「これはなにもないね」

「そうだね。隠すような場所も無い」


 そして仕掛けもない。

 となると残りは……


「あたし、このトマソン嫌いみたい」

「……好き嫌いが出来るほどトマソンは多種多様と言うことで」


 それが慰めになるのかどうか。

 とにかく、ここではトマさんの記憶が蘇ることはなさそうだ。


・この場所がトマソン巡りの二カ所目なら……。番号93へ


・階段が重なっているトマソンへ。番号97へ


・空中階段付き扉のトマソンへ。番号101へ


・原爆型トマソンへ。番号104へ

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