番号66

 改めて調べるといっても、スマホで十分だろう。PCに電源を入れるまでも無い。

 僕はスマホで検索すると……わかりやすい、というか使い勝手が良いのはやっぱり「みんなで作る百科事典」だろうな。


 僕はそのページに行って、ざっと眺めてみる。何だか物々しく書かれているけど……ただまぁ、謎は一つ解けた気がする。


 僕はそれを説明する前に、慎重に「彼女」に確認した。


「えっと……トマソンって言葉が引っかかるだけ? どういう意味かまで思い出せる?」


 僕の確認に「彼女」はサイドテールを揺らしながら、首を横に振った。

 まぁ、それが自然というものだろう。


 そこで僕は超芸術という謳い文句と、そう言われることになった理由の説明。

 そして「トマソン」という名称がどこから出て来たかについても説明する。


 まさか昔の野球選手が由来だったとは。

 しかし無茶苦茶な扱いされてるな、この野球選手……


 で、そこから先は言ってみればトマソンの歴史が語られる。それと……ああ、なるほど不動産じゃないと「トマソン」とは呼ばれないのか。


 つまり屋外に残っている意味不明な建物の残骸。それでいて大事にされている。

 しかし意味不明。無用の長物。


 それが「トマソン」というものらしい。

 それで、さらに詳しく――


「ねぇ、その説明はもういいわ」


 そんな僕の説明を「彼女」は遮った。


「いくら説明されてもピンとこないし、それは記憶があるときのあたしも同じだった気がする」


 そう言えば「彼女」の記憶を探るのが目的だったはずだ。となるとこれ以上、調べるのも時間の無駄かもしれない。


 それにまったくの無駄じゃ無かった。「トマソン」がどういったものか判明したので、「彼女」があんな場所で寝転がっていた理由もわかる気がしたからだ。


 それが解けた謎だ。


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