番号61

「これは複合技よね」

「複合?」

「壁にドアが付いているのと、使いようがない階段と」


 そのトマソンについて、トマさんは論評する。

 僕はそれに加えて、トマソンの場合は空に階段が昇っていって、途中で終わっている場合が多いことを補足した。


 このトマソンの場合は空中から降りてきて、それが地面に届いていないタイプだ。もしかするとなかなかレアケースなのかもしれない。


 そんな事をトマさんと話しあっていると、佐久間さんが感心したような声を漏らした。


「お二人とも、専門家のようです。鶴城さんは記憶まで失わせてしまったのに……」


 再び自省の沼に入り込みそうな佐久間さんを、二人がかりでなんとか元気づける。

 トマさんが元気づけるのもおかしな話だとは思うけど、今は何より優先すべきことがある。


 遺言状だ。


 それがあるからこそ、佐久間さんはすぐに持ち直したのだろう。


「……確かにこのトマソンなら隠す場所も多いでしょうね」


 と、実務的な見解を述べた。

 するとトマさんが頷く。


「それはそうかも。この扉の向こう側とか」

「それならビルの中からアプローチできるんじゃ」


 僕も加わったが、そのアプローチ方向ならもはやそれはトマソンを鑑賞する感じではないよな。

 いや、それがダメなわけでは無いんだけれど。


「その方法も試してみるでしょ、当然。というか、あたし登ってみたい」


 僕がトマソンの意義について考えていると、トマさんがそんな事を言い出した。

 彼女、公園のトマソンにも登っているしなぁ。


 空中の扉の前には金属製の踊り場? とにかくそういうものが設置されているので、その場所に向かうとなれば動詞は「登る」が適切なんだろうけど……


「安全に確認してください。この階段の裏とか隠せるかも知れませんし」


 佐久間さんが、きっちりとトマさんに釘を刺した。


 ……これは佐久間さんは同行しないのかな?


・こっちの階段も気になる。番号75へ


・安全であることは間違いないだろう屋内のトマソン。番号19へ


・これで画像のトマソンは確認出来た。番号41へ

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