番号28

「あたしは何を迷っていたんだろうね。どうしたって一番惹かれてるのは、あの空中階段だったし」


 空中階段のトマソンへ向かいながら、トマさんがそんなこと言った。


「あ~それは……」


 反射的に声をあげながら、その理由を考えてみる。


「例えば佐久間さんが教えてくれた原爆型トマソンは発見された時期から考えると、有力っぽい。それで一番に向かうべきはそれじゃないかって考えちゃったとか」

「それは……あるね」


 適当に言ったのが当たりだったみたいだ。

 調子に乗って、もう一つのトマソンについても考えてみる。


「……もう一つはとにかくここからは遠いだろ。後回しにしたかったところに、佐久間さんのおかげで軍資金ができた。それならさっさと回ってしまうか、みたいな」

「う~ん、そこまでは考えてないけど、さっさと済ませようとは思ってたかも」


 これはかすったぐらいかな?


「とにかく他の二カ所は、行くべき理由があっただろ? でも空中階段は理由が無い。けど、トマさんはどうしても空中階段に惹かれたから……」

「凄いね。あたしよりあたしに詳しい」


 そして、トマさんは「へへ」といたずらに微笑む。


 …………ようし! よくわかんないけど、ようし!


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