番号27

 部長の申し出はもっともだと思うけど、トマさんの心配そうな表情が気になった。

 だからといって、僕の部屋に引き上げる理由もないように感じたけど……


「……わかったわ。何だか私、お局様みたいなのもイヤだし」


 どうやら部長もトマさんの表情から、彼女の希望を感じ取ったようだ。

 やっぱトマさんは僕の部屋に戻りたいようだ。今も嬉しそうな表情がそう語っている。


「良いんじゃ無いですか? 片方、記憶喪失なのにスケベなことする余裕も無いだろうし」


 そこで英賀先輩が、フォローかどうかはわからないが、そう言って賛成してくれる声が上がった。


「……そうだな」


 そして卜部先輩も重々しく賛成してくれた。どの部分に賛成してくれたのかは深く考えないでおく。


 ……いや、僕だってそんな気は無いよ、うん。


 というわけで先輩方と別れて、僕とトマさんは部屋に引き上げることになった。


                 ◇


 戻ってきたところで、それでいきなり眠るような時間でも無い。

 僕たちは順番にお風呂を使った。


 そしてトマさんが入っている間に、僕はPCの電源を入れて、改めてトマソンを検索してみる。

 検索条件に「駕籠市」というワードを付け足して。


 すると、先輩達を疑っていたわけでは無いけど、本当に駕籠市には色んなトマソンがあることが実感できた。

 いくつかの画像には見覚えのある場所が映っていて、


「あそこにあるのか……」


 と、思わず声に出してしまう。

 するとそれを合図にしたかのように、風呂上がりのトマさんがやって来た。


「あ、そっちで調べてるんだ。どうかな?」

「うん。先輩達の言うように、近場で色々あるみたいだ」

「どれどれ~」


 と、トマさんがモニターの前のポジションに割り込んできた。

 つまり僕の横にピッタリとくっついてきた。


 これは……


・いやいや、そんなつもりはないぞ! 番号12へ


・一緒に帰ってきたんだから。そういうことなのでは? 番号58へ

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