番号26
そんな話をしているうちに、僕としては危機感を抱かざるを得なかった。
つまり覗きに行こう、なんて話が出るんじゃないかと。何しろ露天風呂はあまりにも開放的だ。入ったからわかる。
「だ、ダメですよ!」
僕は反射的に叫んでいた。
「いきなりなんだよ」
「なんか……覗こうなんて話が出そうで。英賀先輩、ドローンだって持ってるんだし」
「バカなことを言うな」
英賀先輩は、即座に僕の危機感を否定した。
日頃言われている、英賀先輩がドローンを使う理由はガセだったみたいだ。
「今のドローンではすぐにバレるだろ。静音性が致命的だ。軍事用ぐらいのスペックが必要になるだろう。それに夜間に合わせた迷彩塗装も不可欠だな」
……ガセでは無かったようだ。
英賀先輩を断念させたのは倫理観ではなく技術的な問題だった。
技術の発展は両刃の剣――というか英賀先輩の経済事情が好転したら何が起こるのか。
「英賀」
「……わかってるよ」
いや、卜部先輩がいる限り大丈夫か。
「この話はここまでだ。まだ早いが寝る準備をしておくことにしよう。俺はちょっとやっておきたいこともあるしな――Wi-Fi繋がるようにお願いしないと。いやさすがに普通に繋がるか?」
「先輩」
「ただネットだけだって」
どうにも信用ならないけど、僕も悪乗りが過ぎた自覚はある。
特にトマさんがあんな状態なのに……自己嫌悪だ。何だか逃げ出していたような感覚もある。
かといって、明日から僕はどうすればいいのか。
トマさんの調子が戻ってくれれば良いんだけど……
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