番号21
何しろ一番最初に遠い、路面電車のトマソン駅の確認をしたからな。
後はトマソン巡りと大学に戻る行程はほとんどダブっていると言っても良かったからだ。しかも路線バスに上手い具合に乗り込めた。
暑さにしてやられることも無く、僕とトマさんは駕籠大の門をくぐることが出来たってわけだ。
逆に門をくぐってから学食までの行程の方が大変な様にも錯覚してしまえる。
大学もまた、関係ないものからすれば無駄に広い――一種のトマソンに感じられるのでは無いだろうか?
僕がそんな風に益体のない事を考えているうちに、僕らは無事学食に到着。
先輩方は朝とは違うテーブルを占拠していた。
朝より散らかっているのは、近くで買って来たのであろうホカ弁を広げているせいだな。
……って事は先輩方は随分早くに大学に戻ってきたんだろうか?
やっぱり何かあった? いや何かを発見したのか。
近付いていった僕達に、部長が尋ねてきた。
「一応、お弁当買っておいたけど、どうする?」
「あ、いただきます。トマさんはどうする?」
トマさんもコクリと頷く。
そうすると卜部先輩が、レジ袋からホカ弁を引っ張り出してくれた。
多分、唐揚げかチキン南蛮だろう。無難なところだな。
それを受け取りながら、僕達もテーブル席に着いた。
まずは僕達から報告――になるんだろう。そういう空気だからね。何だか先輩達の間に変な緊張感があるけど……
僕はトマソン巡りの結果、トマさんがこの市のトマソンを知っていたようだと報告する。失われた記憶に引っかかるようだと。
やはり、トマさんはこの市とまったくの無関係ではない。
けれど、進展となるとそこで止まってしまい、そこからトマさんの記憶が復活をすることも無かったと、そう報告を締めくくるしかなかった。
僕の報告を神妙な表情で聞いていた先輩達は、どこか納得したような雰囲気で、僕の報告を受け入れてくれたようだ。
ちょうどホカ弁――僕はチキン南蛮だった――を食べ終わったところだったので、自販機からジュースを買ってくることを理由にして……
さて仕切り直しだ。
次は先輩達の報告の番のはず。
それは先輩達もわかっているのだろう。僕が買って来たジュースを受け取りながら、英賀先輩がこんな常套句で切り出してくる。
「さて、良いことから聞きたいか? それとも悪いことから聞くか?」
・とりあえず良いことから聞いてみよう。番号48へ
・美味しいものは後回しにする主義だ。悪い方から聞こう。番号44へ
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