番号20
居酒屋から一人で引き上げ、生温い夜気を抱きながら帰路を辿る。
明日からの探索に期待しながら。
もちろん、そこにはトマさんのあの表情を無視してしまった後悔もついて回ってるんだけど、どう考えても部長の部屋に行って貰うのが正解だ。
……そう言えば、部長ってどんな部屋に住んでいるのか?
いや、地元なんだろうから普通に一軒家かもしれないな。そうなると僕の部屋に戻るという選択肢はますます無し、という結論になるだろう。
僕がそう思いなおして、納得と同時に鍵を捻ったその瞬間――
僕の体は宙に浮いた。そのまま部屋に部屋に連れ込まれる。口も同時に押さえられているので声を上げることも出来ない。
「――お前、ツルキの娘とどういう関係だ?」
ツルキ? 何のことだ? トマさんのことなのか?
「おい……どうもそいつ、知らないみたいだぜ」
「何?」
二人もいる? 一体何が起こってるんだ?
「……でも、それならその方が良いか。こっちも手間が省ける――いいか兄ちゃん、これから先はあの娘のことは忘れちまいな」
な、何を!?
僕が身じろぎしたところで、さらに頭を床にこすりつけられた。
暴力を振るうことに躊躇いが無い?
一体、こいつらは……?
「大人しくしてれば、これ以上はやんねぇよ。兄ちゃん、あの娘は元々アンタには関係ないんだ。蔦葛の家にいるんだし、後はこっちの問題だ」
「そうそう。アンタは部外者なんだよ」
部外者……
わかったことや、疑問に思うこともあったけど、その言葉が僕の心にのしかかってきた。
それは背中に感じる重さ以上に。
きっとそれは……心が折れてしまったということなのだろう。
僕はトマさんを裏切ってしまったのだろうか? そしてその報いが……
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