番号13

 ……どうにも上手く眠ることが出来ない。

 露天風呂のせいでおかしな想像をしすぎてしまったせいなのか。


 一旦は眠れたと思うんだけど日付が変わらないうちに、目が覚めてしまった。

 部屋の隅では……英賀先輩が何かをしてるな。モニターの明かりが見える。


 暗い中でものを見ても目が悪くなることはないらしい。ただとんでもなく疲れるという話らしいけど、それならそれで早く寝れば良いのに、と思ってしまう。


 何だかイライラしてるな、僕。

 ……とりあえず、水でも飲みに行くか。


               ◇


 そして食堂に行ってみると、そこには部長がいた。

 どういうわけか浴衣姿だ。いや理由はわかるんだけど、どうしてその選択になってしまったのか。


 部長がしなだれかかっているテーブルの上には、氷が入ったグラス。

 ウイスキー……なのかな? いわゆる寝酒というものなのだろう。


 考えるまでもなく、今日は色々あったしな。疲れているんだろうけど興奮して眠れない。

 僕と似たような状態なんだろう、と思ったけど、けしからん想像はしてないよな、うん。


「……部長。眠れませんか?」


 何となくバツが悪くなった僕は、誤魔化すように部長に声をかける。

 当然、僕に気付いていたであろう部長はゆっくりと顔を上げて僕を見た。


 え? 何だか思っていた表情じゃない。疲れてるとかじゃなくて……怖がっている?

 僕はそんな部長の表情に焦ってしまい、逃げるようにコップに蛇口から水を汲んだ。ちょ、ちょっと勢いよく捻りすぎた。


「……ねぇ」


 そんな僕に顔を向けないまま、部長は僕に声をかけてきた。

 なんだか……いや確実にいつもの部長ではない……気がする。


「は、はい!」


 僕は我知らず背を伸ばして、返事をしてしまった。


「ああ、違うわね。先に謝らないと。ごめん。お爺さまの言うとおりだわ。私はすぐにでもトマさんを病院に連れて行くべきだった」

「そ、それは違います!」


 僕は慌てて部長の言葉を否定した。


「最初にそれを後回しにしたの僕ですよ。部長は……先輩方は巻き込まれただけ……」

「いいえ。私達は面白がってしまった。それで、危険なことに手を出してしまって……そして無責任に、私は怖がっているの」


 ああ、やっぱりあの表情は怖がっていたのか。

 やっぱり部長は、あまり駕籠市の中枢とか裏側をあまり知らなかったんだな。それをダイレクトに知ることになってしまった。


 いや、それだけじゃないな。

 やっぱり、それらしい事を聞きかじってしまっていたんだろう。


 だから今、よくわかっていない僕達はのほほんとしていられる。

 部長の恐怖は部長だけが体感できる――だから共感も出来ない。


 僕は……


・慰める。番号40へ(ただしアイテム巳を持っていれば番号109も選択できる)


・「部長」と呼んで励ます。番号34へ

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