番号11

 そもそも空中に浮かぶハシゴを目指してはいけなかった。

 住宅地の中にあるわけで、しかも周囲には雑居ビルまである。


 となれば、普通に歩いて行っても見えてくるはずはない。

 僕達はネットの情報を頼りに似た景色を探しながら、観光客ならまず入り込まない一角に足を踏み入れた。


 こうなると祟ってくるのが暑さだ。

 なまじ空中にあるのがわかっているので、視線を下げることも出来ない。


 一種の拷問のようにも感じてきたが、幸いなことに住宅街自体がさほど大きくは無かったらしい。間もなくトマソンを発見することが出来た。

 もしかしたら僕達の運が良かっただけかもしれないけど。


 何となくスマホを確認してみると、住宅街に入ってから十分ほどで発見できたようだ。

 暑さが時間感覚まで狂わせている。


 そして発見したトマソンは、僕達に達成感をもたらすような存在では無かった。

 何しろハシゴが家の上に覆い被さっているのである。


 暑さと合わせて、見ているだけで妙な圧迫感があるだけ。


「これってビルの方、そのすぐ下からは見れないのかな?」

「それがどうも、ビルの会社の私有地みたいで。まぁ、それは当たり前なんだろうけど、トマソン目当てに無茶する人が結構いたみたいで」

「あ~~」


 と、間延びした声でトマさんはビル方面からのアプローチは無理だと納得してくれた。無茶をした人が複数いたんだろう。

 つまりこっち側からしか見るしか無いわけだけど……


「不思議は不思議だけど、なんかそれだけじゃ無い気がするわ」

「僕もだ。不思議と言うより不条理って感じ」

「それ」


 意見が一致したようで幸いだ。

 だけど、トマさんがこのトマソンにはあまり良い印象を抱けなかったようで。


 ――つまりは推して知るべし。


・孤立した歩道橋へ。番号32へ


・うん、こっちのルートは十分だな。番号5へ

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る