番号4
それから夕食まで、穏やかな時間が流れた。
トマさんは、あてがわれた部長と同室の客間からは出てこなかったけれど、ちゃんとご飯は食べたらしい。
僕達はこれも広い食堂でいただくことが出来て、その料理も含めて身分不相応な贅沢な気分を味わうことになってしまった。罪悪感を覚えるほどに。
何しろ食堂も南側に向けて開放的な作りだったから、夕焼けに映える駕籠市を見下ろしながらの夕食だ。
そういう意図で設計されているのだろうけど、もう少し自重を、とか考えてしまうのは……やっぱり素直にはしゃげない現状があるからだろう。
蔦葛さんはあれ以降姿を見かけない。佐久間さんと連絡を取っているのかもしれない。もしかしたら取ろうとしている、状態なのかも。時間かかってるしなぁ。
そして次にメイドさんに促されたのは入浴だ。
それは確かに定番で、ありがたい話ではあるんだけどなんと露天風呂だった。
温泉かどうかはわからないが、とにかくそういった形式であることは間違いない。
贅沢な話であることは間違いないが、これだけの人数であるため、かえって露天風呂の方が清掃に手間がかからないから、と説明されたわけだが……
……本当だろうか?
だがここで断る選択肢はないし、女性陣はトマさんのこともあるので、後回しになり、絶好の時間帯で僕達男性陣は露天風呂を堪能する事になってしまった。
……ここで本当に隠居できるのだろうか?
やたらに明日への活力を養えそうではある。
何か設計思想から問題がある気がするが――
そんな僕の心配が、おかしな形で実現してしまった。
「そうか二人も……露天風呂に入るんだな……」
部屋に戻ってから英賀先輩がそんな事を言い出したのである。
先輩のためにフォローしておくけど、それは緊張した状態から、この場所にいることで解放されたという安心感。
そして、非現実的と言っても良いだろう現在の状況で、すこし気が緩んでしまったに違いない。
だから、英賀先輩の呟きで僕が思わず想像してしまっても、それは仕方のないこと何だ……
・さらに英賀先輩は部長について説明を始めた。番号92へ
・そもそもトマさんは無防備すぎる部分がある。番号83へ
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます