追放されかけた第3王子の俺。でも実は邪神を封じた陰の実力者なので、クズ人間達に蹂躙教育を始めます!

コマ凛太郎

第1章 王位争奪編

第1話 死刑囚から始める追放生活



「セロニアス。お前から身分を剥奪し、この王国から追放する」



 俺の実父であるリチャード国王から、まさかの言葉が発せられた。


 追放理由は、俺があまりに無能なバカ王子で、さらに王国の金を横領しているという事だった。



「父上、ちょっと待って下さい。その命令には納得がいきません!」

「私の命令が不服か?」

「と、当然です」



 狼狽する俺を、異母兄弟の王子2人と側近の貴族達が嬉しそうに見ている。

 そのニヤけ面はどこか爬虫類を思わせる。



「セロニアス、陛下の言葉が聞けんのか?」

「そうだ、無能は大人しく荷物をまとめて出ていけ」



 笑みを浮かべて、俺を見下している男2人。

 1人が第1王子であるザイトリン、もう1人が第2王子のヒマンドだ。


 母親が違うせいか、どっちの兄とも俺は馬が合わない。でも一応兄弟なのでなるべく逆らわないように、今まで大人しくしていた。




「父上、2人だけで話が出来ませんか?」

「……ふむ。最後の情けだ。お前に5分だけ時間をやろう」

「感謝いたします」



 俺の願いを聞いてくれた父上は、すぐに人払いをしてくれた。

 念の為の護衛として、王国騎士団長のカーターだけがその場に残る。




 周りに人がいなくなると、そのカーターが最初に口を開いた。



「陛下、恐れながら申し上げます」

「何だカーターよ」

「身分剥奪と国外追放、それではセロ様があまりにも不憫過ぎます!」

「もう決めた事だよ」



 そんなリチャード国王の言葉に、カーターが怒りを顕わにする。



「陛下はどうしてそんなに厳しいのですか!」

「え、そうかな」

「そうですよ! セロ様が3歳の時、滝から落としたり」

「あー、あったね。そんな事も」

「そんな事って、それ普通に殺人ですから!」

「いやだって、可愛い子は滝から落とせって言うし」

「言いませんよ!」

「言わんの?」

「言うわけないでしょ!」



 2人の押し問答は続いたが、俺はそこに割って入る。



「カーター、少し落ち着いてくれ。私は父上と話があるんだ」

「も、申訳ございません、セロ様」



 そんな俺を見た父上はゆっくりと話し出した。



「セロ、やはり身分剥奪と国外追放では不服か?」

「当然です。それでは甘過ぎます。いばらの道とは到底思えません」

「まぁ、お前はそう言うと思ったよ」



 父上と俺の言葉を聞いたカーターは、口をポカンと開けてこちらを見ている。



「いっそ奴隷にでもなるか?」

「父上、それは12歳の時に経験済みです」

「…ちょ、ちょっと待って下さいセロ様!」



 カーターが顔を引き攣らせて聞いてきた。



「何?」

「あ、貴方は奴隷になった事があるのですか!?」

「あぁ、ほら帝国に留学した時期あったろ」

「えぇ! 留学じゃなくて帝国の奴隷になってたんですか!?」

「うん。奴隷ギルドを壊滅させて帰国した」

「あ、貴方達は一体…… はうっ!」



 カーターは父上の信念を思い出したようだ。


 そう、俺は父上から「楽な道は選ぶな。いばらの道を選べ!」と胎児の頃から言われて育って来たのだ。




 俺の3歳の誕生日。

 その日俺は、父上に大陸最大を誇るオレガノンの滝に突き落とされた。


 そして5歳の誕生日。

 今度は、王国で最も危険区域とされるスラム街に、なぜか全裸にされて1人置いて行かれた。



 当時の俺は「なんて酷い父親なんだ!」と思った。しかし今思えば、最高に愛のこもった誕生日プレゼントである。




───過酷な状況こそが人間を成長させる。



 父上自身も平民の出から、その信念で成り上がって一国の主にまでなった。


 だから父上の言葉に間違いは無いと、俺は信じているのだ。



「セロよ。1つ聞こう」

「はい、何でしょうか?」

「お前の父は頂点に昇り詰めたと思うか?」

「はい、勿論です。父上は平民から国王にまでなったのですから」

「甘い」

「…は?」

「お前は甘いと言ったんだ。国王など頂点ではない」

「ま、まさか世界の覇権を頂点とされているのですか!?」

「どうやらお前は知らぬようだな」

「え?」

「頂点と書いて、それを限界と読む事を」

「───!!?」



 俺はその場で膝から崩れ落ちた。

何と言う事だ。頂点とは己で決めてしまった「限界地点」の事だったのだ。

 

 俺は自分の甘さに反吐が出そうだった。



「セロよ……」

「はい、父上」

「奴隷が生ぬるいというのであれば…」

「あれば…?」

「死刑囚とかいいんじゃない?」

「し、死刑囚ですか?」

「そうそう、国王殺人未遂犯とかになって」

「……はうぁっ!」



 俺が国王殺人未遂犯 !──からの死刑囚!!

 な、何という「いばらの道」。これだ、俺はこれを求めていたのだ。



「そ、それでいきましょう父上!」

「おお、喜んでくれるか息子よ」

「ちょ、ちょっと待てぇーっ!」



 カーターが慌てて話しに割り込んで来た。



「何だカーター?」

「さ、さっきから何を言っているのですか!?」

「え、セロの修行の話だろ?」

「修行って、死刑囚になったら死ぬでしょうが!」

「ははっ、カーターは心配性だなぁ」



 俺は過度に心配するカーターの肩をポンポンと叩いた。



「いや、ポンポンじゃねーよ! あなた正気ですか!?」

「大丈夫だって、帰るまでが遠足…じゃなくて修行だから」

「い、今あんた遠足って言ったでしょ!?」



 カーターは息を荒げて心配してくるが、俺は父上にアイコンタクトを送った。

 それを見た父上はニッコリ笑って、大きく息を吸い込んだ。



「衛兵、出合えい! セロニアスが乱心だぁー!」

「う、ウソでしょーっ!!??」



 カーターはそのまま腰を抜かして驚く。

 そしてすぐに屈強な衛兵達が、国王謁見の間に続々と入って来た。


 父上の傍で剣を振り上げていた俺は、すぐに衛兵に捕縛され、地下室の牢獄に監禁された。



 こうして「死刑囚」としての、俺の新たな「いばらの道」がスタートしたのだった。

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