第200話 「ちゅー……して?」
「れ、れんじ……そっちじゃ、ひぁんっ!?」
白い首筋にキスをすると、早霧が腕の中で悶えるのを感じる。
唇とは違う柔らかさ、細く華奢な首なのに熱はそれ以上にあった。
ボディソープの甘い匂いや制汗剤のサッパリした匂い、それに早霧の匂いが汗が混じって、俺の頭を熱中症のようにぼやけさせていく。
「ひぃっ……ひゃぁ……ひぃんっ!?」
ポロシャツの胸元を捲り、肩や鎖骨、喉と場所を変えてキスをする。
くすぐりが苦手な早霧はその度に違った声を出して逃げようとした。だけどそれが逆に身体と身体を絡ませていってる事に気づいていない。
無意識だろうか。
下半身は既に、早霧の方から俺の足を挟んで離さなかった。
「ん、んぅぅっ!?」
キスだけじゃ我慢できなくなって、早霧の首筋に舌を這わせた。
ビクッと大きく早霧の身体が跳ねるけど、それでも腕の中からは逃がさない。
少ししょっぱい汗の味は、暑い夏にはちょうど良かった。
「早霧……」
「れ、れんじぃ……」
首回りのキスを止めて顔を上げる。
そこには既にとろんと出来上がっている愛しい親友の顔があった。淡い色の瞳は潤んでいて、色白の頬は朱色に染まっている。薄桃色の唇の端からは少し涎が垂れていて、そのだらしない顔が可愛くて仕方なかった。
「ちゅー……して?」
「……ああ」
「んぁっ!?」
頷いて、俺は早霧の頬にキスをした。
唇ギリギリの涎が垂れた部分を狙って。いくら可愛くても、早霧には綺麗な顔でいてもらいたいから。頬に垂れた涎を、俺の唇でなぞっていく。
「そ、そっちじゃ……ないぃ……!」
「……じゃあ、こっちか?」
「ひぅっ!?」
ベッドの上で体勢を変えて、今度は逆の頬にキスをする。
そのまま下に降りていき、また首筋や肩に唇を落とすと、白くて綺麗な肌は簡単に痕がついた。
「いじわる……れんじの、いじわるぅ……」
「嫌だったか?」
「……いやじゃ、ない……けど」
「じゃあやる」
「んうぅぅっ!?」
ポロシャツのボタンを一つ開けて、露出した大きな胸の膨らみにキスをする。
唇とはまた違う極上の柔らかさ。ほとんど場所が同じなのに首筋とは全く違う匂いがして、キスをすればするほど新しい早霧を知っていくような気がした。
「れんじぃ……んっ……ちゅー……ひぁっ……ちゅーが、いい……あ……そ、そっちじゃ、なくてぇ……」
「……ああ、ごめんな」
胸元に唇を触れる度に頭上からは甘い声が聞こえる。
止めなきゃと頭で分かっているのにその声を聞く度に止まれなくなって、でも流石にマズいなと心の奥では思っているのでギリギリのところで踏みとどまって。
「れ、れんじ……」
「…………はむ」
「んんんんんんんんんんんっっ!?」
でも、早霧の顔を見たらやっぱり無理だった。
絹のように白くて綺麗な長い髪に隠れた耳が赤く染まっていたのが悪いから、俺はそんな悪い耳に軽く甘噛みをする。
どうやら早霧は耳が弱いらしく、今までで一番大きく身体をビクつかせた。
「好きだぞ、早霧……」
「え、えぅ……」
目の前に耳があったので、囁いてみる。
山があるから登る、登山家の気持ちが分かった気がした。そりゃあ父さんも山登りで腰を痛めるってものだ。
「世界で一番、早霧が好きだ……」
「ぅぅ……」
何度言ったって足りない。
昔からずっと、忘れずに俺の事を想い続けてくれた大切な大切な親友に、この気持ちは無限に伝えたって足りないだろう。
優しくて、泣き虫で、明るくて、ワガママで、お調子者で、寂しがり屋で、すごく強くて。
そんな早霧だから、俺は大好きなんだ。
「俺の……勝ちで良いか?」
そしてこれは勝負なのである。
ギリギリもギリギリ、何度も理性が飛びそうになった。
だけどこれだけやれば、早霧も分かってくれるだろう。
俺の方が、早霧の事が好きだって。
「……ちゅー」
「…………」
でも早霧は、ただキスをおねだりしてくるだけだった。
涙目で、顔全体を紅潮させて、物欲しそうに唇を震わせて。
「――んっ」
「――んぅ」
それだけで、理性とか作戦なんて簡単に消え去る。
早霧の色々な所にキスをしたけれど、やっぱり唇が一番良い。
そう思ったんだ。
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