閑話4 『早霧日記その4』
七月二十二日(金)
今日も私、八雲早切りは日課である日記をあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ。
蓮司に、嫌われたかもしれない。
昨日あったことを思い出して私はすごい自己嫌悪に陥っていた。
それもこれもあんなことを言った蓮司が悪いんだけど、それに耐えられなくなって走って逃げちゃった私も悪くないと言えば嘘になる。
親友【なんか】って言われて、頭の中が真っ白になっちゃって、気づいたら前が見えなくなって、部屋を飛び出して、走っていた。
どうして蓮司がそんなことを言ったのか分からない。
蓮司はいつだって私の隣にいてくれて、私の欲しい言葉を欲しい時にくれたのに、昨日だけは様子が全然違ってた。
やだ。
蓮司と離れ離れになるのは、やだ。ずっと一緒にいたい。
夏休みになって学校も休みでもっと一緒にいれると思ったのに、最悪の夏休み初日になっちゃった。
でも、どうして?
どうして蓮司はあんなことを言ったんだろう?
だって、だってだってだって、私と蓮司は……蓮司から……ああああああああああああああっ!
何だろう、何だかすごくムカムカしてきた。
蓮司から言ってくれたのに、まるでそれが無かったみたいなことをそんな、あんなキスの後に言うなんて何を考えているんだろう。
分からない、ずっと隣にいたのに……私は蓮司が分からない。
だから、喧嘩だ。
蓮司の部屋にあった漫画で親友同士は喧嘩するものって書いてあったし、そういう親友を蓮司が好きなら私にだってなれるはずだよね。
だって私達は、親友なんだから。
◆
七月二十三日(土)
えへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへ。
おはよう。
嬉しいことと、楽しかったことと、恥ずかしかったことがいっぱいありました。
突然だけど、日記ってその日の最後に書くと思います。
だからこの日記もその日の最後……ていうか次の日の朝になっちゃったけど、七月二十三日と書いてるけど二十四日に書いてたり……更に言うとスマホで一時的に書いたのを家に帰ってノートに書き写しているので実際は七月二十五日だったり。
ややこしいね。
色々あり過ぎて、ちょっと書ききれないや。
一日経っても、数日経っても、こうして日記にしてる時にどうしても笑顔になっちゃう。でも書かなきゃ。
えーと、その。
蓮司と喧嘩して、仲直りをしました。
勝負みたいな、先にキスをした方が負けってルールで喧嘩して。
その間に沢山のことがありました。
パパとママ達が町内会の旅行に行っちゃって、蓮司のパパとママもそれも同じで、宣戦布告したすぐに私は蓮司の家に帰ってきました。すごく恥ずかしかったです。
その後は蓮司と久しぶりにお買い物に行って、私の方からキスしちゃいそうになったりして大変だったけど、すっごい楽しかった!
一緒にぬいぐるみを選んで買って、お洒落なお店で甘いパンケーキを食べて、ドラッグストアで私お気に入りのシャンプーやボディソープを買ったりして……。
あ、そうそう新しいぬいぐるみのレンジをお迎えしました。
レンジは顔に傷があるオオカミなんだけど仏頂面なところが蓮司にそっくりで、そっけない瞳の奥に優しさを感じるとっても良い子なのです。
レンジを蓮司の部屋に飾ったので、蓮司の部屋の可愛さレベルが一上がったよ。
レベル百を目指して頑張りたい早霧ちゃんです。
あとねあとね!
蓮司にぎゅっと抱きついて眠るとすっごく安心するの!
背中がすっごく大きくて、硬くて、男の子なんだなぁって思って。
それでいつも隣で感じていた温かいお日様みたいな匂いがぎゅーって感じに近くなって、すごく幸せで気づいたら寝ちゃうんだ。
蓮司はやっぱり凄い。
それで、それから、それなんだけど。
蓮司から、キスをしてくれました。
喧嘩してたのに、蓮司と一緒にいればいるほど幸せで、大好きなのにもっともっともーっと好きになっちゃって。
苦しくて、苦しくて、それでも一緒にいたくてお風呂に乱入して。
蓮司の頭を洗ってあげて、私今蓮司の役にたててるって思うとすっごく嬉しくなって、嬉しくなればなるほど、苦しくなって。
頭の中が前とは違う感じでわー! ってなっちゃった。けどそれは好きって気持ちがすっごくて、多分あのまま何も無ければ私からキスしてたと思う。
でもその前に、蓮司からしてくれたの。
そんな私を見て、蓮司が、好きって言って、キスしてくれた。
久しぶりのキスはすっごい気持ちよくて、頭の中がフワフワして、何度も何度も蓮司がして息が苦しいのに心地良くて、どうにかなっちゃいそうだった。
ううん。
多分どうにでもなって良かったと思う。
あの時は。
けれど蓮司が大きなクシャミをして、もしかして風邪をひいちゃったんじゃないかって心配になっちゃって、一瞬だけ、冷静になっちゃって。
そんな時に、ワタシのバスタオルと、蓮司の腰のタオルが落ちちゃって……。
えっと、その、すごくて、大パニックで、それどころじゃなくなっちゃったというかなんていうか。
けど、えっと、蓮司は、蓮司のしか知らないけど、すご、かった……。
◆
七月二十四日(日)
蓮司は、えっちだ。
男の子だから仕方ないかもしれないけど、すっごくえっちだ。
朝起きたら蓮司がいて、おはようして、ご飯を食べて、キスをして。
幸せ。
お昼には、じぶけんのみんなとオンラインでゲームをした。
億万長者ゲーム。
蓮司がチャットで変な言い方をしたせいでみんなに変な誤解をされちゃった。
やっぱり蓮司はえっちだ。
それで四人対戦だから私と蓮司がチームだったんだけど、子供が十人も生まれて……が、頑張りすぎだよね!?
蓮司ってゲームでもえっちなの!?
でも現実は現実でゲームはゲームなのを早霧ちゃんはよく理解しているので、子供の数だけキスをしました。
ま、まだ私達は学生だし子供は早いからね……!?
けど何故かキスをする度にゲームどころじゃなくなって、隣にいるのに蓮司ともっとくっついていたいって思っちゃった。不思議だよね。
だからゲームが終わってからくっついてたんだけど、蓮司が急に私を抱きかかえて後ろからぎゅって抱きしめてくれた。
ドキドキした。すっごいドキドキした。
抱きしめながら耳元で囁いて、髪を撫でながら匂いを嗅いできて、首や顔、唇なんかを触ってきて……えっちだよ! すっごい! 触り方がすっごいえっちだった!!
好きになって、好きって気持ちが溢れて、キスをして。
かと思えば蓮司の方からも不意打ちみたいにキスをしてきて。
パパとママがいないから一泊しただけなのに、好きが溢れていく。
蓮司もそうなのかな? そうだったら良いな。きっとそうだよね?
そんな想いでいっぱいになった私はまた蓮司がいるお風呂場に乱入してました。
リベンジです。
今回は朝のニュースからヒントを得て家から水着を持ってきました。
これで昨日みたいなことは絶対に起きない完璧な作戦! 賢い!
そう、思ってたんだけどなぁ……。
一緒にお風呂に入って、昔話をして、くっついて。
また、好きが溢れて、キス、したくなって、しちゃって。
両手を握り合うキス。
蓮司の大きな手にドキドキした。私より大きくて、いつも守ってくれる優しい手。けれどいざとなったら私の細い手なんて簡単に押さえられちゃうんだって思いながらするキスは、沢山の安心感とちょっぴりの怖さが混ざり合って癖になりそうだった。
いつもと同じなのに違うキス。
好きが好きで好きだらけで好きだから。
私から、舌を入れちゃいました。
怖かったけど、それよりも好きが勝っちゃった。
幸せで、幸せで、ぐるぐるして、ぐるぐるして、まるで蓮司に溺れてくみたいで。
のぼせちゃいました。
すっごく良いところだったのに、のぼせちゃいました。
でも問題はそこじゃなくて!
れ、蓮司が倒れてる私の水着を勝手に脱がしてたのが問題!!
えっち! すっごいえっち!
そ、そりゃあ私だって興味が無い訳じゃないしちゃんとお願いしてくれたら考えてあげなくもないけど、寝てる私の水着を脱がしてたのはもう有罪だよ有罪!
わ、私じゃなかったら捕まってたからね……?
罰として蓮司にはベッドで私をぎゅってしてもらいました。
大きな身体で、大きな腕で、私を包んでくれてすごく安心するの。
私が病気で苦しんでた時も、毎日家に来てくれた。
声をかけてくれた、手を握ってくれた。
私の身体が良くなるのを、隣でずっと待っていてくれた。
元気になっても、隣で守ってくれた。
そんな蓮司が、私は大好き。
だからもう、あの時みたいに離れたくない。
あ、そろそろアラームが鳴る時間だ。
書くの止めてもう少し蓮司の腕の中を堪能しよっと。
そうそう、日記は後に書くから今日も月曜日に書いてるよ。
さあこの後は、ラジオ体操!
えっちな寝ぼすけくんを、起こしてあげなくっちゃね!
――――――――――――――――――
第四章 俺達はキスをさせたい 完
次回
第五章 俺はあの日のキスを思いだしたい
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