エピローグ r・北条流菜・マナさん

〈r〉

あの真冬の夢から5年。僕は職場で昇進し、恋人もできて晴れて結婚した。順風満帆な日々を送っていた。何にもない普通の暮らしをする。実はあの訣別の後、僕は北条さん両親へ面会しに行った。どこか申し訳ない気持ちを抱えて。それぞれ別々の刑務所におり、 10年以上前に流菜さんの訃報を聞いた時、父はより一層自責の念に押されて精神を病んでしまった。母は悲しみつつも受け止めていたそうだ。父は精神病から話すことができなかった。母とは無事話せた。母は母で迷いがあったが、父(母からみて夫)に責められて共犯したそうだ。今も2人はきっちりと罪を償っている。ちなみにメイおばさんは同僚の社員が言うには相変わらず元気だそうだ。

会社に向かう歩道で歩きながら振り返る。それにしても、一体誰が北条流菜さんを殺して地縛霊にしたんだろうか?結局僕は信念を忘却したまま解決しないで見放してしまった。どうしてあの時だけ僕が僕じゃなかったんだろう?


誰かに動かされた。そんな気がする。


「クソっ。」唇を噛み締めていつものあの橋を渡る。このやるせなさはどこにぶつければ良いのだろう。何もできなかったまま白紙だ。僕は上辺だけの何もない自分だ。


〈北条流菜〉

私は最後の頼みの綱でさえ、見放された。どのみち私は生きても死んでも縛られたままだ。


なぜ親に見捨てられたのか。なぜ死ななければいけなかったのか。

私は悪いことを一つもしていないのに。


被害を受けても復讐に燃えることはなかったはず。とにかく不幸のある人生だった。次は、来世は少しでもマシな人生を送っていきたいな。光の眩しさに覆われていく。

ようやく、ここを離れれる。やっと報われるんだ。


〈マナ〉

あれから長い時が経った。

流菜ちゃんとメイおばさんの側を去ってから約10年以上。流菜ちゃん、私はずっとあなたを見てきた。あの地下牢で仲良くなって以来忘れられない。いや、あなたを初めて後ろから抱いて、あの抑揚とした宝悦な感覚が忘れられない。毎日会うたび私の中の興奮が止まらなかった。


死んだ幽霊なのに。


でも…、あの男。r?

せっかく流菜ちゃんが幽霊になってようやく私のモノになると思ったら邪魔をしてきた。彼は霊力があるから流菜ちゃんや他の霊が見えた。だから、私は彼が流菜ちゃんを解放させないように色々対策した!北条家に関するパソコンのデータと書かれた内容のある本を処理した。しまいには、彼に一時的な呪術を施した。彼は呪いの力で簡単に動かすことができた。もちろん、流菜ちゃんにも!

これでようやく私のモノになった!さあ、成仏して黄泉に向かえば来世は互いに夫婦だよ!!待っているから、流菜ちゃん!!

《了》

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

何も無い自分 『川に流れる霊夢』 辻田鷹斗 @ryuto7ryu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画