10 脱出準備・北条&マナside

マナさんのあの強い眼差し、私を全力で救う気だ。

あれから1週間、マナさんは私のところへ1日1回倉庫に来て、親の日程と監視カメラの現状を伝えている。また、私の両手首に施錠された鉄の縛りと鎖の解き方も考えては私に話していた。

「とりあえず、あなたの母と父は午前9時に同時に家を出て、それぞれ別々の車で運転して仕事場へ向かいます。帰ってくる時間は父は20時辺り、母は18時から19時です。特に父は大学病院の院長なため、20時を大いに越してくることが6日間のうち4回あります。また、曜日にすると固定されていたことが判明しました。つまり、父は月曜日から木曜日まで20時以降に帰宅、金曜日は20時前後、土曜日は午前中。母は月曜日から金曜日まで18時から19時まで。土曜日は母がほぼ一日中自分の部屋で読書や勉強をしてます。父は午後に帰ってきて家でゆっくりしています。日曜日は2人して休日なため、昼から必ず毎週温泉、ゴルフ、映画、軽い買い物等出かけます。よって、日曜日の昼、唯一私が家で1人になれます。」大分事細かに調べがついてきたんだ。「あれ?平日の9時以降もマナさんだけですよね?」「はい。ですが、流菜さんが倉庫に入って以来、家の中にも監視カメラがつけられ平日と土曜日は一日中稼働してます。」そんなことに…。道理でマナさんが手こずっていて時間がかかるわけだ。「じゃあ、実際にカメラの細工が可能なのは。」「はい。日曜日です。監視カメラの充電させる日となっています。さらに、外へ出てメイおばさんの家までの足を運んでいけるのも日曜日だけです。住所は以前流菜さんが寄った際、私も同行してたので問題ありません。ただし、あの時はタクシーで送迎してもらってたので、私がバスや電車の乗り方を知る必要があります。」「なるほどねぇ。あとメイおばさんはいつ頃帰ってきそう?」聞いた途端、マナさんは難しい顔をした。「恐らく、長くて1年半は掛かるかと。」1年半!?「そんなに!?何か大事なこと?」「ええ。流菜さんも知っての通り、メイおばさんはフランス王家の家系です。ただ、現在フランスの政治情勢が大きく変化され、全ての法律や他国への手続きを終えるまではメイおばさんも一時的に協力せざる得ない状況になったんです。」「そればっかりは仕方ないですね。でも、それまで私達2人で国外へ逃げてメイおばさんに頼むことができるんじゃないですか?」「もちろんそのつもりです。このまま順調にいけば、倉庫からバレずに脱出してメイおばさんに頼めます。」意外にも脱出までには時間が掛からなさそうだ。「とにかく、早めに脱出しましょう。」「はい!」少しずつだが、希望が見えてきた。というか、マナさんってこんなに饒舌だったけ?


〈マナside〉

とにかく流菜さんを脱出させなければ!私は流菜さんに食事を与え、汚物処理や身体の掃除をさせて倉庫に出る。今日は暑く、日差しが強い。敷地から豪邸まで15mの距離。その間、木の枝に多数の小型監視カメラがある。厄介だ。一つ一つ処理して細工するには時間が掛かる。豪邸に着き、玄関から廊下を歩き、階段を登る。階段を登りながら考える。マナさんは今小学5年生。まだこれからだというのに。自分の部屋に入り、机に座ってパソコンを開く。無論、監視カメラは私の部屋の天井にある。パソコンで作業をしているが、本当は監視カメラを一旦ハッキングしている。よって、豪邸と敷地内全てが丸見えだ。

一昨日ようやくハッキングに成功し、カメラの主導権を握れた。さっき倉庫に寄る前最終確認もした。今日は金曜日、現在14時半、家には私1人。思ったより脱出の準備ができる!次は施錠を解こう。そのためには鉄を腐食させる必要がある。確か、塩水と酢をかけて電気を流せばより腐食が早まる。でも、電気を流すのは流菜がいては無理だ。時間は掛かるけど、1日に何度か可能な限り倉庫に寄って塩水を塗るべきだ。監視カメラもハックできたなら今からでも寄れる。よし!早速準備して倉庫に寄ろう!すぐに1階の台所に寄って棚を開ける。酢があった。使ってないのか新品だった。塩と水を混ぜて作り、バケツに入れて大量に持っていく。敷地へ歩き地下に向かう地面と平衡な扉を開ける。階段を降りて再び鉄扉の前に着く。

倉庫というより地下牢だ。重い鉄扉を開けて流菜さんとまた会う。座って考えごとをしていたようだ。「あれ!?今日はもう無理なはずでは!?」「いえ、監視カメラは一昨日細工完了し、丁度最終確認を終えました。今日から親がいない間は何度も長時間ここへ寄れます。」流菜さんは笑顔になって喜んでいた。「本当ですか!ありがとうございます。って何でバケツを2つ持っているんですか?」「はい。これは塩水と酢です。早速鉄の施錠を解こうと思いまして。」「じゃあ、今日から脱出ですか?」流菜さんの側まで来て手首の施錠に塗る。「いえ、鉄を腐食させて縛りを弱めなきゃいけないので時間はかかります。ですが、今こうして来れたので何度も塗れます。」「はい!」「私はこれからバスや電車、飛行機を実際に乗って試してみます。」なぜか神妙な顔で向けられた。「あのぅ。飛行機の予約だけで大丈夫かと。よく考えたら私と一緒に脱出するのでその辺は私がフォローして大丈夫かと?」ハッ!確かに!「そうでしたね。」ちょっと恥ずかしく思う。流菜さんが続けて言う。「それにカメラの細工が先に完了したなら、父さん達が旅行ではなく仕事中の平日でも脱出できますね。」「はい。だいぶ計画が前進しました。あとは鉄の腐食を施しながらタイミングよく脱出しましょう。平日の午前10時に決行です。9時過ぎだと忘れ物で両親どちらか家に戻ってきたら本末転倒です。それに私と流菜さんが脱出後、ある程度過ごせる道具も準備しますので。」「わかりました!」

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