3 悪夢の始まり

僕は地元で働いてかれこれ2年は経過しようとしていたある時、全てが変わる。いつものように朝起きて出社する準備を行う。「いってきまーす。」と言い、ドアを開けて団地の廊下を歩くと母とすれ違う。母はすれ違う際、疲れた顔を見せないように無理した笑顔で「いってらっしゃい。」と言い、そのまま自分の家(団地なので〇〇号室)に入っていく。昨日は夜勤だったため丁度退勤していたのだ。母は介護施設で働いており、20年以上そこで働くベテランである。年も50歳を過ぎて身体がもたなくなっているのを本人も自覚して最近そのことを話していたため、今は時間があれば別の職種を探している。「すごいなぁ。」と僕は小さく独り言を述べて外に出て歩く。僕の会社は近いため、徒歩で充分だ。そんな歩いてる時いつもの大きな橋を渡る。背後に奇妙な気配がした。「ん?」最初は疑問に思って少し肩を後ろに向けて振り返った。だが、橋の歩道には誰もいなく右の車道には車が何台も走っているだけだ。左を向けばいつもの川が流れているだけ。「まぁいいか。」とにかく歩き出して会社に向かった。会社に着いてそのまま無事勤務を終えて、家に帰る。時期は秋となり、夕方の18時になれば外は薄暗くなり冷たい風が頬をかすむ。帰り道は特に何事もなく、家に着きドアを開ける。「ただいまぁ。」すると家には誰もいなかった。電気はついておらず真っ暗だ。「まあ18時ぐらいなら父はまだ仕事だし、母はスーパーで買い物にでも行ったのだろう。いつもと変わらないな。」と。そう思いながら、そのまま電気は付けずに部屋着に着替え、軽く5分は仮眠を取ろうと窓側にある横長のソファに寝っ転がる。目を瞑り気持ちを楽にした途端、何かが自分の身体に入り込んだ気がした。「んっ!」咄嗟に目を開けたが、身体が動かない。いや、動けない!やばい!まさか!これが金縛り!?僕はこれまで金縛りの経験はない。これが人生初である。驚く隙もなく突如右の玄関から音と気配がする。『ペタ、ペタ、ぺた』水の濡れた裸足の足音がする。徐々に窓側の僕が寝ているソファに向かってくる。『ぺた、ペタ、ペタ』やばい!やばい!やばい!やばい!目を必死に横に向けるが何も見えないし、足音と気配が近づくだけだ。何となく気配が僕の真横まで来た途端足音は止んだ。その瞬間僕は恐怖ゆえに咄嗟に目を瞑った。すると意識がなくなり、しばらくしたような感覚で目を開ける。電気が付いており、眩しい。「すごい汗だよ。」「大丈夫か?」ゆっくりと起き上がり、横のテーブルには母と父が座っており心配していた。笑い声を聞きすぐその聞いた場所を見たが、テレビが流れていただけだ。私は両親に「大丈夫。」と返答した。寝ていたような感覚だ。時計を見ると19時半だ。そうだ!すぐ様さっきの出来事を思い出す。「俺、なんか金縛りにあったみたいかも。何かうなだれてたりしてなかった?」「金縛り!?でもうなだれてたりしてなかったよ。」「ああ、汗はすごい出てたがぐっすり寝ていたように見えたけど?」「そう…。」「疲れているんじゃないか?rは明日明後日休みだからゆっくり過ごしていな。」「まぁ、そうかなぁ。」母も心配そうな顔をしながら「何かあるならいつでも話していいんだよ。」と言う。「いや、大丈夫だよ。特に仕事やプライベートでも心配事はここ最近ない方だよ。」そう言って僕はソファーから立ち上がり、シャワーを浴びていく。シャワーを浴びて着替え、夕飯をとり、いつものように父と母と他愛もない話をし、食器も洗い、歯を磨いた。金縛りなのかなぁ。それとも夢だったのか。ベットに寝て再び目を瞑った。

《夢》

辺りは霧がかり目の前に川がある。何か聞こえる。「…ぅ。う。…す。……けぇ。……ぇ。…ぇ。………けて。」

《朝になり、目が覚める》

夢を見たような?何の夢だっけ。僕はそんなこともすぐに忘れてベットを起き上がる。朝の支度を整え、いつも通り家を出る。休日なため歩いて10分程の行きつけのジムに向かう。団地を出た途端、驚いた!「っ!……。」目の前には人が多く歩いていた。「なんで!?なぜ?」疑問はすぐに解けた。よく見ると目の前の人々はどこか意気消沈したような生気がない。4歳ぐらいの男子や学校の制服を着た女性、建設現場の作業着やスーツを着た男性もいる。老人も。とにかく幅広い層の人がいる。その人達は暗い雰囲気が漂い、目線も下を見てる者が多い。そして、歩いているというより浮遊して移動している。機械的な動きで真っ直ぐ移動している。僕は驚きと恐怖で立ち止まっていた。間違いない。この人達はこの世にいない。わかりやすく言うなら、幽霊だ。私はただ茫然と立ちながらそう考えていた。とにかく歩き出して会社に向かわないと。幽霊たちがいて遅刻しましたなんて通用しない。というか別の場所に連れていかれるかも。通る幽霊達は僕に気付かず、ただ僕の身体をすり抜けてすれ違う。すり抜けられるのは案外何も感じない。内心すげー!とも思う。歩道を歩いててとにかく様々な人が通る。縦横無尽におり、まるで都会を歩く気分だ。道路で運転している人から僕を見ると変に思うだろう。「あの人何びくびくしながら歩道を歩いてるんだ?」と。すると、現代には珍しい和服をした中年男性を見かける。どうやら、昭和より前の時代に亡くなった者もいるらしい。和服なんて大河ドラマしか見たことない。何だか幽霊っているんだなぁと自然と実感が湧いてきた。ただ、すれ違う皆、自分が死んだことに気付き傷心しているようだった。とにかく歩き、いつもの橋が見えた。なんとなく嫌な予感がしつつ橋を渡った。すると一瞬にして辺りが霧に覆われた。やはり今の状態で橋を歩くのはまずかったのでは!背中から寒気が急にきた。「うぅ!」正面先の橋の終着点にはスーツを着た若い女性がいた。肌は白く髪型はショートカットであり、顔を白い布で被せて表情がわからない。ここへきて私は全身に恐怖が走った。『ウ。…ぅ。』

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