第8話 感情

 冬夜の記事が出た2日後

 

 今は冬夜に会う為に東郷が用意してくれた部屋に来ている。


 内装がシンプルだけどオシャレで、勝手なイメージだけど東郷っぽいなと思った。


 「がっくん、わざわざ来てくれてありがとう。」


 「うん、食べ物とか諸々持ってきた。ちょっとあの時さ、いくらなんでも感情出し過ぎたかなと思って反省してる。ごめん。ちょっと今日はお詫びも込めて来た。」


 「いや、謝んないで!だってがっくんの言う通りだし。」


 冬夜は申し訳なさそうな声でこう続けて言った。


 「でもさ、付き合ってること、認めて良かったと思ってる自分がいるんだよね。アイドルとしてどうなのって、がっくんは思うと思うけど、隠しごとをしてると嘘をついている感覚になるんだよね。それが苦しい。じゃあ恋愛するなって話だけど、俺にとって彼女を愛することが生きる理由なんだ。アイドルになったきっかけも彼女だし。、、、俺は本当にアイドル失格だね。アイドルという肩書きや仲間やファンよりも彼女を優先してしまう最低野郎だ。」


 冬夜は自分で自分のことを呆れて苦笑していた。


 「時間が経てば収まると思うから、ばっくれるなよ?久しぶりにゆっくりしときな。俺ら待ってるから。じゃ、俺もう帰るわ。」


 「えっ、もう帰るの?」


 「俺は冬夜と違って忙しいんだよ。笑」


 そう言って冬夜の部屋を出た。


 本当は今日、この後何も予定は入れていなかった。


 ただ、感情が爆発しそうで今はこれ以上冬夜といれる気がしなかった。

 

 この感情は怒りではない。


 多分 "嫉妬" だ。


 嫉妬は一番危険な感情。



 少しでも気持ちを抑えるべく、早歩きでエレベーターの方に向かい、エレベーターを待っていた。


 タワマンのエレベーターは相変わらず来るのに

時間がかかる。


 待っていると足音が近づいてきた。東郷の子だろうか。


 「こんにちは。」


 ん?女子の声?東郷の子って男子じゃなかった?


 振り向くと、制服を着た女子が立っていた。


 その女子は俺と目が合うと一気に顔がひきつって、逃げていった。


 どう考えても行動が怪しかったので、俺は制服の女子を追いかけた。逃げるのが結構速かった。


 

 結果的にこの女子は不審者ではなくて、東郷の子のクラスメイトだった。


 俺は逃げた理由を聞いた時に、この子は同志かもしれないと思った。


 そして俺は勢いにかけてこの子にこう言った。


 「仲間にならない?」

 

 

 

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PARADOX __ 雨朝都季 @ameasa_tuki

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