第6話 ホットスナック

 「昴、美味しいものってさ、、、。」


 ビニール袋の中にコンビニのホットスナックがこれでもかというほど入っていた。

 

 「いいだろう?笑。急に連絡来た時にさ、ちょっと長丁場になる予感がしたんだよね。だから、腹も心も時間も乗り切れるように全種類買ってきた!岳はホットスナック好きなのにストイックだから全然食べないだろ?この機会に食べまくろうぜ!」


 「....。ありがとな。頂きます。」


 「いえいえ〜。どうぞどうぞ〜。」


 昴、山崎 昴(やまさき すばる)は同期であり同級生であり、AZUREのメンバーの1人だ。


 昴はいつもチャラチャラした感じで振る舞っているが、周りの雰囲気や感情を読み取るのが上手くて、更に直感が異常なほどに当たる。


 だから多分、"こうなること"を見越してわざわざ"ホットスナック"を買ってきたんだと思う。


 「ちょっと冷めてるけど真冬じゃないしまだましだよな?ほんのりあったかいし。」


 「うん、全然大丈夫。もしかしてさ昴がちょっと遅れてきたのって、これ買ってたから?」

 

 「ザッツライト!思ったよりも時間かかっちゃたんだよね。」


 「えっ、身バレしたとか?」


 「違げーよ!俺ほぼバレねーし。実は合計3店舗行ってるんだけどさ、2店舗がほぼ売り切れてて無かったんだよ笑。」


 「まじか。わざわざありがとうございますー笑。」


 「はーいよ笑。」


 本当に久しぶりのホットスナックだ。やっぱり美味しい。


 しばらく夢中になって食べた後、昴がゆっくり口を開いて言ってきた。


 「ちょっとは落ち着いた?」


 「うん。ちょっとはね。」

 

「ちょっとでも落ち着いたなら良かった。」


 本当は昴のおかげでだいぶ落ち着けていた。でもそれがちょっと悔しかった。


 「俺さ、冬夜が熱愛認めることぜってー賛成しないけどさ、納得はするというか、腑には落ちるんだよね。」


 「なんで?」


 「なんでって、昴は分かってるだろ?笑。冬夜は出会った時から愛で満ち溢れた奴だったじゃん?人を愛して人に愛されて。冬夜は本当に素敵な人間だと思う。だから冬夜にとっては多分認める一択しか無かったんだよ。」


 「そうだよねー。特定の人を愛してその人を見捨てない、裏切らないことって人としての道徳心がある人じゃないとできないしね。」


 「うん。でも腑には落ちるけど理解はどうしてもできない。だって俺たちはアイドルだろ?アイドルならアイドルとしての決断をするべきだろ?アイドルの自覚というか、冬夜は"人間"としての要素が強すぎる。」


 「それはそう。でもさ、多分人間としての要素が強いことが、冬夜がたくさんの人から愛されてる理由でもあるよね。」


 「......そうっちゃそうなんだけどさ。.....もう俺、何が正しいかわかんなくなってきた。」

 

 


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