第4話 通行人Y、巻き込まれる
「ねえ、なんで逃げるの?」
清水岳が聞いてきた。優しい声のトーンだけど、これでもかというほどの圧をかけてくる。
一瞬は圧に負けたけど、別に悪いことをした訳じゃないしと思い、堂々と質問に答えようとした時に勢いよくドアが開いた。
「茉央大丈夫!?どうかした!?って.....え?AZUREの岳じゃん.....!」
「君は東郷の子?」
清水岳が櫂に尋ねる。
「まあ、はい。そうですけど。」
「はじめまして、清水岳です。親御さんとかから聞いてないかな?うちらが3日前からここでお世話になってるんだけど。」
「いや、聞いてな..... あ。」
櫂は携帯を出した。
「すみません、確認していませんでした。メッセージに連絡が入ってました。そうなんですね。よろしくお願いします。」
櫂は清水岳を見たすぐは驚いていたが、そのあとは異常に落ち着いていた。
「で、君は誰かな?急に逃げるからびっくりしちゃったよ。」
私に話を戻してきた。先程といい、話し方だけ優しいのがやけに怖い。
「彼のクラスメイトです。渡すものがあったので渡しに来ただけです。で、急に逃げたのはあなたが芸能人だったからです。ただそれだけです。」
「ん?ちょっと意味分かんないんだけど。」
私の説明が足りなかったのか、清水岳が納得していなかったので追加で説明した。
「ただの一般人は芸能人にプライベートで会ってしまってはいけないと私は思うんです。それが偶然だとしても。お互いに巻き込んで巻き込まれる状態が少なからず発生してしまうと思うんです。それにアイドルの場合は特にそこらへんがシビアになってくるので。まあこれは一個人の意見でしかないですけどね。なので本能的に逃げてました。」
この説明だったら大丈夫でしょうと思い少しドヤってみたが、思ったよりも反応が薄かった。
「あの、せっかくちゃんと説明したので反応してくださいよ。まぁ私も一応言い分があるといえ、急に逃げるなんてちょっとやばかったかなと思ってます。それはすみませんでした。」
「あっ、いや、その、ちゃんと説明してくれてありがとう。こちらこそ追いかけてごめんなさい。」
さっきの威圧的なオーラはなくなっていて、とても真摯に謝ってくれた。
「じゃあお互い様ってことで!私は帰りますね。さよなら。櫂は...また今度?笑」
帰ろうと歩き出すと、清水岳に止められてこう言われた。
「ねえ、仲間にならない?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます