第2話 タワーマンション
放課後、東郷櫂に会うべく住所のところに向かったのだか、
「え、、タワマン....?」
都心にある学校の最寄りの駅から二駅しか離れていなかったし、部屋番号も四桁だから怪しんではいたけど実際にタワマンを目の当たりにすると、生きている世界が違うことが身をもって感じる。
「何?東郷って金持ちなの?」
入り口にはコンシェルジュがいて、そこで東郷櫂の名前を言って自分の名前を書いたら入れてくれた。その後もいくつかのセキュリティを通過してやっとドアの前についた。
「やっとだよ。なんでこんなに遠いのよ。しかも最上階だし。」
インターホンを押すと東郷櫂が出てきた。
身長はまあまあ高く、容姿については一度も悩んだことが無さそうな顔立ちをしていた。
「...どうも、はじめまして。あの、叔父からは聞いています。わざわざ来てくださってありがとうございます。」
何を聞かされたんだろうと、一瞬考えた。
「はじめまして。これ、東郷先生から預かってきたやつです。はい。」
「ありがとうございます。」
「じゃあ私用済んだので帰りますね。じゃっ!」
「あの。」
さっさと帰ろうとすると東郷櫂に呼び止められた。
「どうかしましたか?」
「あの、なんかジュースでも飲みますか?わざ わざ来てもらってるのにすぐに帰ってもらうの は申し訳ないんで。」
普通だったら大丈夫ですと答えていたと思うが、慣れないタワマンに結構疲れていた。
「じゃあ甘えてもいいですか?じつはここまで 来るのに結構疲れたんですよね笑」
「本当にありがとうございます。」
「お邪魔しまーす。」
部屋の中にはいると、ビビるくらい広すぎた。
「広っ!天井高っ!漫画とかドラマに出てきそ うな部屋なんですけど、、、。」
生きている世界が違い過ぎる。
「そう?笑」
東郷櫂が笑った。
「うん、そう。笑」
「ジュースなに飲む?」
「オレンジジュースある?」
「あるよ。」
「じゃあオレンジジュースで。」
「了解。」
なんか急にお互い緊張が解けて自然とタメ口になった。嫌な奴では無さそう。
東郷櫂はオレンジジュースをおしゃれなグラスに入れて出してくれた。
「ありがとう。」
「いやいや、こちらこそありがとうだよ。」
「まーね。それは否定しない笑」
「あのさ、担任も東郷だから櫂君って呼んでも 大丈夫?」
「うん。ていうか櫂でいいよ。」
「オッケー。櫂ね。」
「うん。」
口に含んだオレンジジュースは、普通のスーパーには売っていない、高そうな味がした。
「私は吉田 茉央(よしだ まお)。好きに呼ん で。」
「…。じゃあ茉央って呼ぶわ。」
「オッケー。あのさ、単刀直入にいうけど櫂はなんで学校来ないの?」
「楽しくないから。」
「……。え?」
「こいつはお金持ってるから仲良くしたら恩恵受けるだろうとか、金持ってるやつと友達という肩書きが欲しいとかそう思っている奴しか寄って来ないし、近づいて来ないやつも俺をみんなと同じようには見てくれない。」
それだけで学校に来ないのかよと思ってしまった。でもそれはそれで窮屈なのだろうか。
「中学までいた学校は親の社会的地位で優劣つけたがるやつばかりだったから高校は違うところに行ったのに、結局そこまでかわらなかったというか。」
ふーん。なんか超金持ちの行く私立にでも行ってたのかな。金持ちのことは分からん。
「私はこの学校いいと思うけどね。スマホ触れるし校則ほぼないし、自由な感じ?だし中学みたいに威張っている先生もいないし。それにこの学校カーストがないだけ超絶ましだよ。嫌な人とは絡まないか静かに距離を置けば良いだけだと思うけど。絡んでくるならかまわなければいいだけだし。そんな休まなくてもいいのにとは思うけどね。」
あっ、やばい。またやってしまった。完全にいいすぎた。どうしよう。
でも櫂は声に出して笑ってくれた。
「茉央さ、よく強いねって言われない?」
「いや。」
「そう?」
「うん。」
少し言い過ぎたから嫌な気になったかなと不安になったけどそうじゃないみたいでほっとした。
「あっ、そういえばさ、この前親戚からクッキー缶貰ったんだけど食べる?」
そう言って持ってきてくれたクッキー缶はとてつもなくかわいかった。
「めっちゃかわいいね!食べていいの?」
「もちろん。」
「いただきまーす。」
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