PARADOX __

雨朝都季

第1話 おにぎりと肉まん

 高校二年生の春。


 響だけは立派に青春してそうだが、実際は教室の自分の席でスマホと真剣に向き合っている少し残念な女子高生として生存している。


 多分私はいじめられたり無視されない程度に教室で浮いてる。


 でもまあ浮いちゃってるのは仕方ないしクラスメイトも危害加えてくる訳じゃないからいっか、と思うことにした。


 少しは期待していた漫画のような高校生活はもう諦めている。


 教室で浮いたわたしの味方は二次元。もう二次元という世界が存在しているだけで幸せです。


 二次元ありがとう!


 そしてこの高校はなんといっても二次元に触れるためのデバイス:スマホがほぼ自由に使える!!


 だから以外と1人でいることもおかげで楽しめている。


「吉田は今日もイベランか?」


 げっ。


「今日もというか昨日始まったばかりなんでけ ど。」


「えっ、ついこの間もイベランしてただろ?」


「それは別のゲームです。というかイベント走ってるのに気づいてるんだったら話しかけないで下さいよ。」


 イベント走っている時も平気で喋ってくるこいつ:東郷(とうごう)はチャラいし軽いけど何故か教師をやっていて私の担任。しかも2年連続。


 なんで教師をやってるのか分かんなくなるほど"先生"という肩書きが似合っていない男だが、多分浮いてる私を気にかけて話しかけてくれているのだろう。


 ぶっちゃけ東郷とは波長が合わないタイプだが上から目線で物事を言ってこないし、先生ぶる人よりは全然いい人だと思っている。


「それはごめん!あのさ、お願いがあるんだけど!」

「嫌です。」


「内容ぐらい聞いて!」


「はぁ、、。で、どんなお願いですか?」


「あのさ、同じクラスに東郷櫂(とうごう かい)いるだろ?でもこいつさ、1年の途中から学校来てないんだよ。2年になってからは一回も来てないしさ。だからさ、プリントとか書類持ってってくれない?」


「いや、普通に郵便で送れば良いじゃないですか。」


「それはそうなんだけど、そうじゃないっていうか。同級生と交流した方がいいかなぁというか。」


「ていうか、東郷って名字同じですけどまさか親戚ってわけじゃないですよね?」


「....。いや、、、。」


まさかの親戚かよ。


「公私混同じゃないですか。やりません。」


「いや公私混同してる訳じゃないし。いや、してるのか?でもしてないと思う!本当にお願いお願い!」


 東郷がめっちゃ頼むということは何か東郷なりに考えているのだろうか?


 東郷は先生らしくないけど、生徒思いなところは私でもわかる。


「じゃあおにぎりと肉まん、奢ってくださいね。」


「本当?ありがとう!後日きちんと奢らさせていただきます!」


 私はおにぎりと肉まんを条件に東郷櫂の家に行くことにした。


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