第23話『完全無欠の美女②』

「くぅっ・・・」


槍を奪われたアルバートは右手に魔力を溜める。


(これは、さっきの・・・)


-魔術『ファイアーボール』-


火球となって放たれた魔術がコウを襲う。

奪った槍の石突いしづきを地面に突き立てそれを軸に跳び上がる。

当然跳び上がった後に槍も引き上げた為、ファイアーボールに当たる事はなく槍も無事である。


「何なんだ、何なんだ貴様は!」


アルバートの両手に魔力が集まる。

集められた魔力が炎となり巨大な龍の姿となった。


-魔術『ドラグーン・フレア』-


炎の龍は身体をしならせコウへと向かう。


(流石に避けきれない、周りに見られるのは良くないけど・・・)


ストレージから夜桜を出して構える。


-八神創成流・・・-


夜桜を抜き放とうとした瞬間、コウの前に人が現れた。


-×××『×××』+魔術『アイスランス』×30-


氷で出来た巨大なランスがいくつも炎の龍を囲い一斉に放たれる。

次々と打ち抜かれ削られた身体は小さな火の粉となって消えていった。


-魔術『アイスバインド』-


スタジアムに突き刺さった氷のランスが大きな紙の様にコウとアルバートを拘束する。


「2人共、そこまでだ」


現れたのはいかにも魔法使いといった装いの女性だった。

黒いトンガリ帽子にローブ、銀髪のロングヘアが明かりを反射し輝いている。

拘束されたアルバートはその顔に覚えがある様で、バツの悪そうな顔をしている。


「レオネス家の坊やか、新学期からしばらく経つがあまり良い話しは聞かないね。少し頭を冷やしな」

「元Sランク冒険者風情が!俺は伯爵家の人間だぞ!」

「入学時に話したはずだ、この学園において爵位など無意味だと。君の父であるギルガメル・レオネス伯爵に話しは通っているし、納得してもらっている。君と違い素晴らしい人間性をお持ちだぞ?」

「くっ・・・」

「そして・・・」


女性はアルバートを意に介さずコウの方へと振り返る。

値踏みする様にジロジロとコウを見る。


「白髪に黒い瞳・・・君がコウだね?」

「良くわかりましたね」

「シルバから聞いているからね、私がここの学園長にして超絶美女の『ユーリ・ファンタム』だ、素晴らしい身のこなしだったよ」


シルバと同じパーティーにいたとの事ですっかり同じ位の歳かと思っていたが、ユーリのは20代後半にしか見えない。

確かに美女ではあるが、自称超絶美女宣言でどんな人物かお察しである。


「さぁ、みんな講義が始まる!教室に戻りたまえ!」


ユーリの一声で生徒達は蜘蛛くもの子を散らす様に闘技場を後にした。

ユーリは残ったコウとアルバートの拘束を解いた。


「アルバート・レオネス、しばらく寮での謹慎だ。細かい事は追って通達する」

「何だと!?この俺に対してなんたる・・・」

「闘技場の使用は申請が必須、更に実際の武器を使用した戦いも申請が必須、教員の立ち会いも必須、いくつルールを破れば気が済むんだい?さぁ、コウ、学園を案内しよう」


アルバートをその場に残し、2人は闘技場を後にした。

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